ランチア・テージス

テージス（Thesis）

テージスは、イタリアの自動車メーカー・ランチアが生産した前輪駆動の大型セダンです。日本では正規に輸入されていないものの、少数がガレーヂ伊太利屋を通じて国内に持ち込まれ、多くの自動車愛好家の間で注目を浴びました。

概要

1990年代後半、ランチアは親会社であるフィアットの経営困難に伴い、ブランドの存続が懸念される状況に陥りました。この危機を打開するため、1998年のトリノモーターショーにてコンセプトモデル・ディアロゴスを発表し、今後のブランドの方向性を示しました。そのデザインのテーマは、後に発表されるテージスに継承されました。

テージスは先代のモデル、カッパの失敗を教訓にし、高級車市場で求められる力強いデザインやノスタルジックな要素を融合させた新たなスタイルへと進化させました。このモデルは、装備や安全性、ボディ剛性、質感といった面で飛躍的な改善が施されており、過去のランチア車両と比べて大きな進歩を遂げました。

また、テージスはイタリアで最上級のセダンとして伝統的に選ばれ、公的機関でも使用されています。ローマ教皇の公用車としてランチア・ジュビレオが納入されたり、大統領専用車としてストレッチリムジンが製作され、2022年現在でも公の場で確認されているなど、その存在は重要です。

しかしながら、商業的には販売不振に悩まされ、2001年から2009年の間に生産された台数は約16,000台と少なく、高コストの改善が進まないまま2009年で生産が終了しました。

デザイン・内装

テージスの内装は、ランチア・チェントロスティーレによってデザインされ、外装とともに上品かつクラシカルな雰囲気を醸し出しています。つやを抑えたウッドトリムや、チェスターフィールドソファのようなデザインのヘッドレストを持つシートが特徴です。

内装素材にはポルトローナ・フラウ社製の本革トリムやアルカンターラを使用したシートが取り入れられ、質感の高さを際立たせています。また、特殊な空調システムが装備され、標準の空調吹き出し口に加え、インストルメントパネル上部から微風が出る設計になっており、乗員にごく穏やかな空気感を提供します。

モデル・エンジン・装備類

テージスのエンジンラインナップは非常に多彩で、最初はアルファロメオ製のDOHC V6・3リッターエンジン（215ps）、DOHC 直5・2.4リッターエンジン（170ps）、DOHC 直5・2リッターターボエンジン（185ps）、そして人気のコモンレールディーゼル直5・2.4リッターターボエンジン（150ps）を搭載していました。その後、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの改良により出力が向上し、さらにアルファロメオの「GTA」に搭載されていたV6・3.2リッターエンジンのデチューン版（230ps）が追加されました。

すべてのモデルにはマルチリンク式サスペンションが装備されており、スカイフック理論に基づいた油圧制御式のアクティブダンパーを設定。さらには電動パーキングブレーキが世界で初めて搭載され、注目を集めています。特に、テージスはその高級感と技術力で自動車市場における個性を確立しました。

関連項目

• - ランチア

参考文献

• - Car Styling 誌
• - カーグラフィック誌
• - ネコ・パブリッシング／ワールド・カー・ガイド誌

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