ランチア・フラミニア

フラミニア（Flaminia）

フラミニアは、イタリアの自動車メーカーであるランチアが1957年から1970年までの間に製造した大型高級乗用車です。このモデルは12,633台が生産され、当時のイタリアで代表的なプレステージカーとなりました。特にイタリアの大統領の公用車としても使用されており、その存在感は特別なものでした。

本車両のデザインは、著名なカロッツェリアであるピニンファリーナ、トゥーリング、ザガートによって手がけられ、多様なボディスタイルが用意されています。クーペやカブリオレなどのスペシャルボディも人気を博しました。また、フラミニアの名称は、古代ローマの街道名から取られており、ランチアの伝統を受け継いでいます。

開発の背景

フラミニアは、イタリアの傑作中型車アウレリアの後継車として開発されました。このモデルの最大の技術的特徴は、1920年代の名車ラムダ以来のスライディングピラー式前輪独立サスペンションから、より一般的なダブルウイッシュボーン式に変更したことです。この改良により、従来のランチア車に見られた「ランチア・トレモロ」と称されるステアリングに伝わる微振動の問題が改善されました。

後輪はアウレリアから受け継いだド・ディオン式を採用し、トランスアクスル方式も継承されています。エンジンはV型6気筒で、基本設計はアウレリアのものが引き継がれています。さらに、ブレーキシステムは、初期の約500台は四輪ドラムを装備していましたが、その後、当時まだ珍しかったダンロップ製の四輪ディスクに改良されました。

ボディバリエーション

フラミニアには、多様なボディスタイルが用意されています。最初は「ベルリーナ」、その後「クーペ」「GT」「スポルト」が追加され、いずれもピニンファリーナ、トゥーリング、ザガートといった一流カロッツェリアのデザインが施されています。特に、クーペやGTの生産台数が多かったことが、フラミニアが高級サルーンとしてよりもパーソナルカーとしての人気を得ていたことを示しています。

フラミニアは1970年に生産が終了し、その後はフィアット・130がイタリアのプレステージカーの地位を引き継ぐこととなります。

ベルリーナ

フラミニアの中で最も代表的なモデル、ベルリーナはピニンファリーナ特有のデザインによって作られ、1970年まで生産されました。エンジンは2,500ccで102馬力または110馬力、さらに2,800ccの128馬力エンジンを搭載したものが存在します。初期モデルは特徴的に、後窓の外側と内側にワイパーを備えていました。また、日本のいすゞ・ベレルのデザインには、フラミニアの影響が見受けられます。

クーペ

同様にピニンファリーナによりデザインされたクーペも人気を博し、生産台数はベルリーナを上回りました。フロリダIIに似た2+2クーペ形式で、多くのバリエーションが存在しました。

GT・GTL・コンバーチブル

トゥーリングがデザインしたGTやコンバーチブルは、4灯式ヘッドライトが特徴です。さらに、1962年にはホイールベースを延長したGTLが追加され、これも人気を集めました。

スポルト

ザガートによるスポルトは、個性的なデザインが目を惹く2シータークーペです。その後に発展した「スペル・スポルト」は、シリーズ最強のエンジンを搭載し、さらに存在感を増しました。

大統領専用車

1960年、当時のイタリア大統領は英国女王エリザベス2世の訪問に合わせ、特別なリムジンを製作しました。ピニンファリーナに依頼した4台は、7人乗りのランドーレットであり、特別な内装が施されました。

日本でのフラミニア

日本へは当時の総代理店である国際自動車商事を通じて、イタリア大使公用車などが輸入されました。1968年に最後に輸入されたスペル・スポルトは、四国自動車博物館に展示されています。

フラミニアは、単なる自動車という枠を越え、文化や歴史の一部として多くの人々の記憶に刻まれています。その魅力は、今なお人々を惹きつけてやみません。

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