ランチア・ベータ・モンテカルロ・ターボ

ランチア・ベータ・モンテカルロ・ターボ：グループ5時代の伝説

ランチア・ベータ・モンテカルロ・ターボは、1979年から1981年にかけて、世界中のレースシーンを席巻した伝説的なグループ5レーシングカーです。ランチアがスポーツカーレースへの復帰を目指し、メイクス世界選手権（WCM）ディビジョン2（2リッター以下クラス）制覇を目標に開発されました。その圧倒的な戦闘力と数々のタイトル獲得は、ランチアの技術力の高さを世界に知らしめることとなりました。

誕生の背景

1976年、ランチアはストラトスでスポーツカーレースに挑戦しましたが、期待通りの成果を上げることができませんでした。この経験を活かし、ランチアは新たな挑戦としてベータ・モンテカルロ・ターボの開発に着手。ベータ・モンテカルロのボディシェルをベースに、徹底的な軽量化と空力性能の向上を図り、強力なターボエンジンを搭載したマシンを作り上げました。

マシンの開発

シャシーとサスペンションの開発は、名門レーシングコンストラクターであるダラーラが担当。空力性能の開発は、名門カロッツェリア、ピニンファリーナのロレンツォ・ラマチョッティが担当しました。そして心臓部となるエンジンの開発は、ランチアのチーフエンジニア、ジャンニ・トンティが指揮を執りました。

ベータ・モンテカルロのセンターセクションのみを使用し、前後にスペースフレームを接続することで、軽量かつ高剛性のシャシーを実現。サスペンションは前後ともマクファーソンストラットを採用。タイヤはピレリ製ラジアルタイヤを装着しました。ボディカウルにはケプラーを使用することで、FRPと比較して約3割の軽量化に成功しました。

さらに、ベータ・モンテカルロ・ターボの先進的な特徴として、パーツの耐久性を考慮し、セッションごとに各コンポーネントを交換する戦略が挙げられます。これは当時のレース界ではF1のみで行われていた高度な戦略でした。

強力なターボエンジン

エンジンはベータ・モンテカルロ用のNA直4エンジンをベースにターボチャージャーを装着。ディビジョン2のレギュレーションに対応するため、排気量は2,000ccから1,425ccに縮小されました。ターボチャージャーはKKK製を採用。フィアット・アバルト131と共通のDOHC16バルブヘッドを採用することで、高い出力とレスポンスを実現しました。エンジンを前傾させることで低重心化も図られました。初期の出力は370ps/8800rpmでしたが、開発の進展に伴い、最終的には473ps/9500rpmまでパワーアップしました。

輝かしい戦績

1979年、ベータ・モンテカルロ・ターボはメイクス世界選手権に参戦。リカルド・パトレーゼ、カルロ・ファセッティ、ワルター・ロールといった名ドライバーを擁し、シーズン途中からの参戦ながら5戦2勝でディビジョン2タイトルを獲得。総合ランキングでも2位に入る活躍を見せました。

1980年には、エンジン出力が410psに向上し、車重も40kg軽量化されるなど、更なる進化を遂げました。マシン名は「モンテカルロ・ターボ」となり、WCMで全勝優勝、ディビジョン2と総合の両タイトルを獲得。さらに、ドイツレーシングカー選手権（DRM）では、GSチューニングのハンス・へイヤーがドライバーズタイトルを獲得するなど、その活躍は多岐に渡りました。

1981年は、世界耐久選手権（WEC）に参戦を継続。2リッター以上のディビジョン1用として、490psを発揮する1,773ccターボエンジンも開発されました。シーズン前半は苦戦しましたが、プライベーターチームの活躍もあり、最終的にメイクスタイトルを3連覇。総合でも連覇を達成しました。

ベータ・モンテカルロ・ターボのエンジンは、その後もLC1などのマシンに搭載され、レースシーンで活躍を続けました。

まとめ

ランチア・ベータ・モンテカルロ・ターボは、優れた技術力と大胆な戦略、そして名ドライバーたちの活躍によって数々の栄光を手にした、グループ5時代の伝説的なレーシングカーです。その功績は、今もなお多くのモータースポーツファンに語り継がれています。

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