ランドスペース

ランドスペース（藍箭航天）

ランドスペース（英語名: LandSpace Technology Corporation、中国語名: 藍箭航天空間科技股份有限公司）は、2015年に張昌武氏によって設立された中国の民間宇宙開発企業です。

本社機能は北京に置かれており、製造・開発拠点としては浙江省内に複数の大規模施設を展開しています。特に、嘉興市には総工費15億ドルを投じて建設された中大型液体ロケットの組み立て・試験工場があり、湖州市には先進的な知的生産拠点が設けられています。これらの施設は、同社のロケット開発と量産を支える基盤となっています。

開発ロケット

ランドスペースはこれまでに複数のロケット開発に取り組んできました。

朱雀1号 (Zhuque-1, ZQ-1)

最初に開発されたのは、小型固体燃料ロケットの朱雀1号（別名: ランドスペース1）です。全長19メートル、直径1.35メートルで3段式の構造を持つこのロケットは、中国人民解放軍のDF-26弾道ミサイルで使用されているモーターを基にしていると考えられています。設計上の性能目標は、高度300kmの低軌道に最大300kgのペイロードを投入することでした。離陸重量は27トン、推力は45tfです。

朱雀1号の初の打ち上げは、2018年10月27日に酒泉衛星発射センターの移動式プラットフォームから行われました。中国中央電視台のWeilai-1衛星を搭載しての飛行でしたが、1段目と2段目の燃焼、フェアリング分離は成功したものの、3段目の不具合により残念ながら軌道への投入は達成できませんでした。しかしながら、朱雀1号は中国の民間企業が開発したロケットとして、初めて衛星軌道への到達を目指したという歴史的な意義を持つ機体となりました。

この打ち上げ後、固体ロケットモーターの供給元との契約が終了したと伝えられ、朱雀1号はこの1機限りで開発が終了するのではないかという見方が広がりました。実際に、ランドスペースはシンプルな固体燃料ロケットから、より先進的な液体メタン燃料ロケットである朱雀2号の開発に軸足を移すことを発表しました。

朱雀2号 (Zhuque-2, ZQ-2)

朱雀2号は、液体酸素と液体メタンを燃料とする中型の液体燃料ロケットです。高性能な液体メタンエンジンである天鵲11および天鵲12を搭載しています。その能力は、高度200kmの低軌道に最大6,000kg、または高度500kmの太陽同期軌道に最大4,000kgのペイロードを運ぶことが可能です。

当初は2020年の初打ち上げを目指していましたが、開発の遅延を経て、最初の打ち上げは2022年12月に行われました。この初飛行は軌道到達には至りませんでしたが、2023年7月12日に行われた2回目の打ち上げで見事に軌道投入に成功しました。この成功により、朱雀2号は液体メタンを推進剤とするロケットとして、世界で初めて人工衛星の軌道投入を達成した歴史的な機体となりました。これは、将来の再使用可能なロケットや、地球以外の惑星へのミッションにおいて有望視されているメタンエンジンの実用化に向けた大きな一歩となります。

朱雀3号 (Zhuque-3, ZQ-3)

現在開発が進められている朱雀3号は、液体酸素と液体メタンを燃料とする大型液体燃料ロケットです。特に注目されているのは、1段目を地上に回収・再使用することを目指した設計となっている点です。ペイロード能力も大幅に向上しており、1段目を回収する場合でも低軌道に最大12,500kg、使い捨ての場合は最大21,000kgのペイロードを投入できる計画です。2023年現在、開発の最終段階にあり、2025年の初打ち上げが予定されています。再使用技術の確立により、宇宙輸送コストの大幅な低減が期待されています。

ランドスペースは、これらのロケット開発を通じて、中国の商業宇宙分野における重要な役割を担っており、特に革新的なメタン系ロケット技術で世界の宇宙産業からも注目を集めています。

もう一度検索