ラヴァレ家のジュリアンとマルグリット

ラヴァレ家の悲劇：近親相姦で処刑された兄妹の物語

17世紀初頭、フランスのノルマンディー地方に存在した封建貴族ラヴァレ家。その一族に生まれた兄ジュリアンと妹マルグリットは、禁断の愛に身を焦がし、悲劇的な結末を迎えることになります。1603年12月2日、二人はパリのグレーヴ広場で、近親相姦の罪により、わずか21歳と17歳という若さで処刑されました。

兄妹の許されない愛

妹マルグリットは、両親の都合により13歳という若さで、年上の男性と結婚させられました。しかし、この政略結婚に不満を抱いたマルグリットは、兄ジュリアンのもとへ逃れ、やがて妊娠します。この兄妹間の肉体関係が、近親相姦という重大な罪として問われることになったのです。当時の社会において、近親相姦は、倫理的に許されない行為であり、死刑に値する重罪でした。

処刑と波紋

兄妹の犯した罪は、社会に大きな衝撃を与えました。そして、二人は公開処刑という形で、その罪を償うことになります。処刑後も、ラヴァレ家の悲劇は、人々の記憶に長く刻まれ、さまざまな議論を呼びました。

ウェスターマーク効果との関連性

この事件は、エドワード・ウェスターマークが提唱した「ウェスターマーク効果」の反例として議論されることがあります。ウェスターマーク効果とは、幼少期から親密な関係にある近親者同士は、互いに性的魅力を感じにくくなるという学説です。ラヴァレ家の兄妹は、この学説が当てはまらない事例ではないかとも考えられています。しかし、この事件が、幼少期からの密接な関係が必ずしも性的嫌悪感を抱かせないこと、または、別の要因が絡んでいる可能性を示唆しているとも考えられます。

後世への影響

ラヴァレ家の兄妹の物語は、その悲劇的な内容から、後世の文学や映画などの芸術作品に大きな影響を与えました。ジュール・バルベー・ドールヴィイの小説「歴史の一頁」（1882年）は、この事件を直接的に扱った作品です。また、ジョン・フォードの戯曲「あわれ彼女は娼婦」（1633年）も、この事件をモデルにした作品であるという説があります。さらに、2015年には、ヴァレリー・ドンゼッリ監督によって「禁断のエチュード マルグリットとジュリアン」という映画が制作されました。この映画では、時代設定をあえて不明確にすることで、普遍的な愛の形を描き出そうとしています。

まとめ

ラヴァレ家の兄妹の物語は、単なる近親相姦事件としてだけではなく、人間の愛や欲望、そして社会の倫理観を深く考えさせられる事件です。この悲劇は、現代社会にも通じる問題を提起しており、私たちはこの事件から、多くのことを学ぶことができるでしょう。

関連事項

衣通姫伝説：近親相姦をテーマにした日本古代の伝説
ベアトリーチェ・チェンチ：近親相姦をテーマにしたイタリアの悲劇
* 禁断のエチュード マルグリットとジュリアン：ラヴァレ家の事件をモチーフにした映画（2015年）

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