ラ・スキアヴォーナ

『ラ・スキアヴォーナ』、または『女性の肖像』は、イタリア盛期ルネサンスの巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1510年から1512年頃に制作した油彩画です。この作品は、ティツィアーノが20代前半の時に描いたもので、彼の初期の傑作の一つとされています。現在、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

モデルの人物について

絵画は17世紀初頭まで『ラ・スキアヴォーナ』と呼ばれていました。この名称は、1640年の書簡に初めて登場しますが、ダルマチア（1420年から1797年までヴェネツィア共和国の領土）出身の女性を意味しています。しかし、実際には、モデルの服装はヴェネツィア共和国の裕福な女性の服装に合致しており、貴族階級の人物であった可能性が高いとされています。一部の研究者は、モデルがカテリーナ・コルナーロであると特定しようとしていますが、確固たる証拠はありません。

以前、この絵画はジョルジョーネの作品とされていましたが、今日ではティツィアーノの初期の作品であると広く認められています。ジョルジョーネの作品に見られる甘美さとは異なり、ティツィアーノの作品には生気が感じられます。1511年にティツィアーノが制作したフレスコ画『新生児の奇蹟』に登場する女性との類似性も、この作品がティツィアーノによるものであることを裏付けています。

作品の特徴

当時、女性の肖像画の制作は珍しいものでした。この絵画では、女性は無地の灰色の背景を前に、ほぼ全身像で描かれています。彼女の曲線的な身体は、非常に写実的かつ正確に描かれており、衣服の豊かな布地がそれをさらに強調しています。女性は自然でゆったりとしたポーズを取り、身体をわずかに回転させながら、顔は鑑賞者の方を向いています。

ティツィアーノはこの作品を制作する過程で、構図を積極的に変更しました。当初は右情報部に開いた丸窓があり、女性の両腕は体の横に下げられていました。また、女性の肖像が描かれた大理石のレリーフも、当初とは異なるものに変更されています。欄干の下部分はオリジナルですが、高い部分は後に追加されたものであり、その下の布地は塗り重ねられた絵具を通して見ることができます。

この大理石レリーフに描かれた横顔の肖像は、古典古代の貴族の徳を示すことで、モデルの女性を称賛しています。また、過去への広がりを示すことで、彼女の名声が将来にわたって維持されることを示唆しています。さらに、このレリーフは、当時の絵画と彫刻の優劣を巡る論争にも関連している可能性があります。

絵画の欄干には「TV」という署名があり、これはおそらく「Tiziano」を意味していると考えられています。

歴史

この肖像画は、1942年にフランシス・クック卿によって、彼の父ハーバートを記念して、芸術基金を通じてロンドンのナショナル・ギャラリーに寄贈されました。現在もナショナル・ギャラリーのコレクションとして、目録番号NG5385で所蔵されています。

2009年10月から2020年1月まで、『ラ・スキアヴォーナ』はリーズのヘンリー・ムーア研究所に貸し出され、「絵画における彫刻」という展覧会に出品されました。

参考文献

デーヴィッド・ローザンド著、久保尋二訳『世界の巨匠シリーズ　ティツィアーノ』、美術出版社、1978年
Francesco Valcanover, L'opera completa di Tiziano, Rizzoli, Milano 1969

外部リンク

ナショナル・ギャラリー (ロンドン) 公式サイト、ティツィアーノ『ラ・スキアヴォーナ』 (英語)
Catalog nr. 536 in Herbert Cook's collection catalog, 1913, on archive.org
* High definition image on Google art

もう一度検索