ラ・ナシオン

ラ・ナシオン：アルゼンチンを代表する保守系日刊紙

『ラ・ナシオン』（La Nación）は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで発行されている日刊新聞であり、その発行元である新聞社の名前でもあります。「国民」を意味するこの新聞は、アルゼンチン国内の保守系を代表する存在として知られ、中道系の代表格である『クラリン』紙と長年にわたり競合関係にあります。平日には平均16万部、日曜日には25万部を発行しており、国内で広く読まれています。

歴史

1870年1月4日、元大統領であり軍人でもあったバルトロメ・ミトレらによって『ラ・ナシオン・アルヘンティーナ』として創刊されました。その後、1945年8月28日に現在の『ラ・ナシオン』に改名されました。創刊から1914年までは、元外務大臣のホセ・ルイス・ムラトゥレが主筆を務めました。1930年代には、1日の平均発行部数が35万部に達し、ラテンアメリカ地域における有力なオピニオンリーダーとして、ブエノスアイレスで絶大な影響力を持っていました。当時、それを上回る発行部数を持っていたのは、タブロイド紙の『クリティカ』のみでした。

しかし、1945年に新たなライバルである『クラリン』が登場し、1962年には『クリティカ』が廃刊、1975年には『クロニカ』が休刊するなど、アルゼンチンの新聞業界は大きな変化を遂げました。これらの変遷を経て、ブランケット判の『ラ・ナシオン』とタブロイド判の『クラリン』が市場のトップを争う構図が確立しました。保守系では『ラ・プレンサ』もライバルとして存在しています。2013年のデータでは、『ラ・ナシオン』の1日あたりの平均購読部数は15万9,486部で、ブエノスアイレスの日刊紙購読者の約20%を占めています。また、国境を越えて世界中で読まれている国際的な新聞でもあります。

特徴

『ラ・ナシオン』は、スペイン語圏で最も著名な執筆者を多数抱えていることで知られています。ホセ・マルティ、ミゲル・デ・ウナムーノ、エドゥアルド・マジェア、ホセ・オルテガ・イ・ガセット、ルベン・ダリオ、アルフォンソ・レイエス、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、マリオ・バルガス・リョサ、マヌエル・ムヒカ＝ライネスなど、文学界の巨匠たちが過去にコラムを寄稿していました。伝統的に保守的な立場をとり、カトリック教会、軍事、大農場主の代弁者としての側面も持ち合わせていますが、コラムニストの個性によって幅広い政治思想に対応しています。

出版

創刊当初、『ラ・ナシオン』はバルトロメ・ミトレの邸宅から出版されていました。その後、事務所を何度か移転し、1929年にはフロリダ・ストリートにプラテレスケ様式の本社を構えました。現在の本社は、既存の日刊紙の事務所があった6階建てのブシャール・プラザを残しつつ、2000年から2004年にかけて建設された26階建てのポスト・モダニズム様式の高層ビルにあります。

『ラ・ナシオン』を主宰するバルトロメ・ミトレ（創設者と同名の玄孫）は、アルゼンチン新聞業界の業界団体であるADEPAや、新聞印刷工業の業界団体であるパペル・プレンサを、2008年から2009年にかけて『クラリン』対キルチネリスム論争を展開したクラリン・グループと共に運営しています。

2012年初頭には、『ラ・ナシオン』社はアメリカのImpreMedia社の株式過半数を取得し、アメリカを拠点とするスペイン語紙である『El Diario-La Prensa』と『La Opinión』を買収しました。しかし、この買収はアルゼンチン国内で寡占や不正競争、価格のつり上げを招くとして批判を受けました。また、アメリカのヒスパニック系コミュニティのリーダーからは、アルゼンチン紙の保守的な偏向と、買収した新聞が地域コミュニティとの接点を欠いている点を理由に批判的な意見が上がりました。新経営陣は業務コスト削減のため、アメリカの従業員の大規模な解雇を行うなど、経営圧縮努力を始めており、アメリカのヒスパニック系報道業務が弱体化する可能性も指摘されています。

外部リンク

* 電子版 lanacion.com.ar (スペイン語)

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