ラーウィック

ラーウィックは、グレートブリテン島の北海上、約160キロメートル沖合に浮かぶシェトランド諸島に存在する唯一の町であり、この諸島の行政中心地（州都）です。人口はおよそ7千人が暮らしており、諸島最大の島であるメインランド島の東岸に面した天然の良港を有する港町として栄えています。周辺の主要都市との位置関係を見ると、スコットランドのアバディーンからは北へ約340キロメートル、ノルウェーのベルゲンからは西へ約370キロメートル、フェロー諸島のトースハウンからは東へ約370キロメートルと、北大西洋に囲まれた独特の地理的ポジションにあります。

この町は17世紀、特にニシン漁の隆盛期にその基礎が築かれました。以来、漁業はこの地の重要な産業であり続け、現在でも活気あふれる漁港として機能しています。地名の「ラーウィック」という名称は、古ノルド語に由来しており、かつてシェトランド諸島で使われ、19世紀頃まで存続していたとされるノルン語との歴史的な繋がりを示唆しています。

ラーウィック港からは、シェトランド諸島内の他の島々はもちろんのこと、域外へ向かう重要なフェリー航路が多数運航されています。スコットランド本土のオークニー諸島を経由してアバディーンへ向かう航路や、遠く北大西洋に位置するフェロー諸島、さらには東のノルウェーへと繋がる国際航路も開設されており、諸島の交通・物流の拠点としての役割を担っています。町内には、地域住民向けの情報を発信する地域唯一のラジオ局、SIBCが放送を行っています。

ラーウィックの文化的なハイライトの一つに、毎年1月の最終火曜日に開催される勇壮な火祭り「ウップヘリーアー（Up Helly Aa）」があります。この祭りは、古代バイキングの伝統を現代に伝えるものであり、その名は古ノルド語で「長い冬の終わり」を意味すると言われています。1890年代から続くこの祭りは、昼間は「グジャール」と呼ばれる選ばれた男たちが、その年のために新調したバイキング衣装を纏い、模造の斧を手に行進することから始まります。夜になると祭りは最高潮を迎え、参加者は町の住民へと広がり、千人を超える人々が手に松明を持って、精巧に作られたバイキング船の模型を先頭に行進します。壮観な松明の行列が港に到着すると、クライマックスとして、そのバイキング船に松明が投げ込まれ、炎とともに燃え上がる光景が繰り広げられます。この祭りは、シェトランド諸島のバイキングにルーツを持つ歴史と文化を象徴する一大イベントであり、多くの観光客をも惹きつけています。町役場である市庁舎の建物には、シェトランド諸島の歴史に名を刻む人物たちを描いた美しいステンドグラスが窓に嵌め込まれており、町の歴史や文化を感じさせる観光スポットとなっています。

もう一度検索