リア・ファル

リア・ファル：運命を告げる聖なる石

リア・ファル（アイルランド語: Lia Fáil）は、アイルランドのケルト神話に登場する神秘的な石であり、「運命の石」を意味します。ダーナ神族がエリンにもたらした四秘宝の一つとして知られ、戴冠石、聖なる石、フォールの聖石など、様々な別名を持ちます。

神話におけるリア・ファル

『アイルランド来寇の書』によれば、リア・ファルはトゥアハ・デ・ダナーン神族が北方四島の都市ファリアスからアイルランドへ持ち込んだとされています。王都タラに置かれ、正当な王が戴冠式でこの石の上に立つと、石が叫び声を上げ、その王の未来を予言すると伝えられていました。

しかし、「大いなるファル」（アイルランド語: Fál mór）とも呼ばれるこの石は、キリスト誕生とともに力を失ったとされています。英雄クー・フーリンや、彼の養子ルギド（ルゲイド）のために叫ぶことはありませんでした。怒ったクー・フーリンが石を殴ると、「ファルの心髄」（アイルランド語: críde fáil 英語: Heart of Fal）がタルトゥ（現在のテルタウン）まで飛び散ってしまったという伝説も残っています。その後、伝説の上級王百戦のコンが即位するまで、リア・ファルが再び叫ぶことはなかったと伝えられています。

スコーンの石との関係

スコットランドの史家ジョン・オヴ・フォーダンやヘクター・ボイスは、スコットランドの戴冠石であるスクーンの石が、アイルランドから持ち出されたリア・ファルであると主張しました。しかし、この説は現在では否定されています。スクーンの石とリア・ファルは、どちらも戴冠式に使用される聖なる石という共通点を持つものの、起源や歴史的背景は異なると考えられています。

アーサー王伝説への影響

リア・ファルの伝説は、後のアーサー王伝説にも影響を与えたとされています。選定の剣カリバーンが刺さった岩は、リア・ファルがモデルになったと言われています。また、ケルト/ドルイド魔術の源流として、小アルカナのタロットにおけるペンタクル（トランプのダイヤ）のモチーフにもなったとされています。

まとめ

リア・ファルは、アイルランド神話における重要な聖石であり、王権の象徴、予言の力、そしてケルト文化の深遠さを物語る存在です。その神秘的な力と伝説は、現代においても多くの人々の心を惹きつけ、様々な物語や芸術作品に影響を与え続けています。

関連項目

トゥアハ・デ・ダナーン（ダーナ神族）
スクーンの石

資料

* 『アイルランド来寇の書』

もう一度検索