リカルド・ノルドローク追悼の葬送行進曲

『リカルド・ノルドローク追悼の葬送行進曲』（原題：Sørgemarsj over Rikard Nordraak）は、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグが、若くして亡くなった親友リカルド・ノルドロークを追悼するために作曲した作品です。

グリーグにとってノルドロークは、単なる友人以上の存在でした。彼らは共にノルウェーの民族音楽を基盤とした国民的な音楽様式を確立しようと志し、その友情はグリーグの音楽観形成に大きな影響を与えました。しかし、ノルドロークは1866年3月20日、わずか23歳という若さでこの世を去り、その報せはグリーグに深い悲しみをもたらしました。

この悲しみを乗り越えるかのように、グリーグはノルドロークの死後間もない4月6日に本作を作曲、翌日にはトリオ部分を加えて完成させました。当初はピアノ独奏曲として出版されましたが、その後、1867年に金管楽器と打楽器のための編曲版を作成、さらに1880年代には当時の標準的な軍楽隊（吹奏楽）向けに大幅な改訂を施し、ノルドロークの生誕50周年となる1892年に出版されました。

この曲は、変ロ短調の重々しい足取りと、中間部のノルウェー風の旋律が特徴的で、亡き友への深い哀悼の念が込められています。吹奏楽版では、E♭管とB♭管のクラリネット、コルネット、トランペット、チューバといった楽器が効果的に用いられ、それぞれの楽器が持つ音色の個性を生かしながら、楽曲の持つ感情的な深みを表現しています。

現在では演奏される機会が非常に少なく、演奏会で取り上げられることはほとんどありませんが、この曲はグリーグがノルドロークへの友情と音楽的才能をいかに大切に思っていたかを物語る作品といえるでしょう。

なお、ヨハン・ハルヴォルセンによるオーケストラ編曲版も存在し、この版はグリーグ自身の葬儀で演奏されたという逸話があります。これは、グリーグがノルドロークの死後も、彼への追悼の念を持ち続けていたことを示唆していると言えるでしょう。

編成

ピアノ版: ピアノ独奏
金管合奏版: トランペット 3、ホルン 3、トロンボーン 3、チューバ、スネアドラム、バスドラム
* 軍楽隊版: 各1対のクラリネット（E♭管及びB♭管）、コルネット、トランペット、チューバ2

構成

楽曲は、変ロ短調の主部と、長調の中間部から構成されています。主部は、葬送行進曲という形式にふさわしく、重々しく悲しげな雰囲気で始まりますが、中間部では、ノルウェー風の旋律が慰めるように奏でられます。演奏時間は約6分です。ピアノ版とハルヴォルセンのオーケストラ版はイ短調で書かれていますが、金管合奏版と軍楽隊版は変ロ短調に移調されています。

外部リンク

リカルド・ノルドローク追悼の葬送行進曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

もう一度検索