紀元前12世紀

紀元前12世紀：激動の時代

紀元前12世紀（紀元前1200年から紀元前1101年）は、世界史において激動の時代として知られています。特に地中海世界や西アジアでは、既存の秩序が大きく崩れ、新たな時代への転換期となりました。この世紀には、気候変動の影響による旱魃や、謎に包まれた「海の民」の侵攻など、多くの重要な出来事が発生し、世界各地の文化や社会に大きな影響を与えました。

紀元前1200年頃：文明の崩壊と変容

紀元前1200年頃には、「紀元前1200年のカタストロフ」と呼ばれる一連の出来事が発生しました。これは、気候変動による東地中海の旱魃が引き金となり、ヒッタイト王国などの強大な帝国が崩壊し、ミケーネ文明も衰退したとされています。同時に、「海の民」と呼ばれる謎の集団がエジプトやレヴァント地方を襲撃し、多くの都市が破壊されました。この大規模な変動は「青銅器時代の崩壊」とも呼ばれ、地中海世界や西アジアは青銅器時代から鉄器時代へと移行していきました。

この時代、ヘブライ人たちはモーセの後継者ヨシュア率いるイスラエル連合王国を形成。ヨシュアはヨルダン川を渡りカナン地方に侵入し、イェリコの戦いでイェリコを占領。その後、カナン人、モアブ人、アンモン人、ミデヤン人、ペリシテ人などとの抗争を続けました。デボラ、ギデオン、サムソンなどの士師たちが活躍した時代でもあります。

一方、中央ヨーロッパでは青銅器時代後期が続き、骨壺墓地文化やハルシュタット文化が発展しました。ハルシュタットでは岩塩の採掘が盛んになり、「塩の道」と呼ばれる交易路が開発されました。

インドでは、アーリヤ人が西北インドに進出し、定着を始めました。彼らは『リグ・ヴェーダ』と呼ばれるインド最古の文献の編纂を開始しました。パンジャーブ地方では、バラタ族とトリツ族による十王戦争が勃発し、彼らはプル族ら十部族に勝利しました。

東アジアでは、遊牧民族の葷粥が周の古公亶父を攻撃したため、古公亶父は都を移転しました。北アメリカでは先史プエブロ文化が発展し、メソアメリカではオルメカ文化、アンデス高地ではチャビン文化が栄えました。

紀元前1190年代：海の民の侵攻とヒッタイト王国の滅亡

紀元前1190年代には、「海の民」による地中海東岸の諸都市の破壊がピークに達しました。ウガリット、カデシュ、アララハ、カトナ、エマル、アシュケロン、ハツォルなど多くの都市が破壊され、ヒッタイト王国の都ハットゥシャも陥落しました。ヒッタイト王国は滅亡し、その勢力はシロ・ヒッタイト国家群へと変貌を遂げました。この混乱期に、リュディア王国やカンマヌ王国といった新たな勢力が台頭しました。

ギリシャでは、トロイア戦争が勃発したとされています（伝承に基づく）。また、この頃、後期ミケーネ文明は終焉を迎えました。ミケーネ、ティリンス、ピュロス、ミデアなどの宮殿が崩壊し、線文字Bの記録も途絶えました。

紀元前1180年代以降：エジプト、バビロニア、そしてギリシャ

紀元前1180年代には、エジプトではタウセルト女王が死去し、第19王朝の断絶の後、セトナクトによって第20王朝が始まりました。バビロニアではカッシート朝がエラムによって滅ぼされました。

紀元前1170年代には、エジプト王ラムセス3世が「海の民」連合軍をデルタ地帯で撃退しました。この戦闘における「海の民」の構成員として、ペリシテ人、チェケル人、シェケレシュ人、デネン人、ウェシェシュ人が確認できます。また、この頃にはギリシャで皆既日食が起こり、『オデュッセイア』の記述にある皆既日食との関連性が指摘されています。

紀元前1150年代には、アイスランドのヘクラ火山が噴火し、エラム王シュトルク・ナフンテ1世がバビロンを陥落させました。エジプトでは、ラムセス3世の治世下でデール・エル・メディーナでストライキが発生し、これは記録上最古のストライキとされています。ラムセス3世は後に暗殺されました。

紀元前1140年代以降、エジプトではラムセス5世が死去し、天然痘の罹患者であったことが判明しました。アテナイではテュモエテスの死によってテセウス王家が断絶し、ピュロス王家のメラントスがアテナイ王に即位しました。バビロニアではイシン第2王朝のネブカドネザル1世が即位し、エラムを攻撃してマルドゥク神像を取り戻しました。アッシリアではティグラト・ピレセル1世が即位し、領土拡大政策を行いました。

紀元前1100年代には、殷の文丁が周の西伯季歴を処刑しました。この時代にはギリシャにドーリア人が侵入し、鉄器時代が本格的に到来しました。アカイア人はアッティカやエーゲ海の島々、そして小アジアのイオニア地方へと追いやられました。

主要人物

この時代を代表する人物には、ヘブライ人のヨシュア、ヒッタイト王国の最後の王シュッピルリウマ2世、エジプト第20王朝のファラオであるラムセス3世とその後のラムセス4世から11世、エラム王シュトルク・ナフンテ1世、トロイアの最後の王プリアモス、アテナイ王メラントス、バビロニアのネブカドネザル1世などがいます。

伝説

この時代には、周の祖先である古公亶父の逸話や、トロイア戦争に関する様々な伝説が伝えられています。

まとめ

紀元前12世紀は、気候変動、民族移動、戦争など様々な要因が絡み合い、世界各地で大きな変化が起こった時代でした。この時代の出来事や人物、そして残された記録は、現代の歴史研究においても重要な意味を持っています。

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