リゼルグ酸アミド

リゼルグ酸アミド(LSA)とは

リゼルグ酸アミド（LSA）は、幻覚作用を持つアルカロイドの一種で、エルジン(Ergine)とも呼ばれます。化学構造はLSDと類似しており、LSDを合成したアルバート・ホフマンによって発見されました。LSDと比較すると、向精神薬としての効力は5～10%程度とされています。

LSAの発見と歴史

LSAは、アルバート・ホフマンがLSD合成の研究中に発見した物質です。南メキシコの原住民が儀式に用いるヒルガオの一種、リベア・コリボサ（別名タービナ・コリボサ、スネーク・プラント）の種子に含まれており、アステカの言葉でオロリウキと呼ばれています。1959年、ホフマンによってオロリウキからLSAが分離されました。ホフマンは、LSAが専門的な化学者でなくとも容易に合成できると述べています。

LSAを含む植物

LSAは、リベア・コリボサ以外にも、ギンヨウアサガオ（通称ハワイアン・ベイビーウッドローズ）やソライロアサガオにも含まれています。ソライロアサガオのヘブンリー・ブルー、パーリー・ゲート、フライング・ソーサーといった品種にも含まれます。これらの種子を粉末にして飲料に混ぜて摂取すると、LSDと同様の体験が得られるとされますが、吐き気や下痢などの副作用を伴うことがあります。LSD100mg相当の体験を得るには、オロリウキの種子で約10個、ハワイアン・ウッドローズの種子で4～8個が必要とされています。

菌類におけるLSAの発見

LSAは、地中海のエレウシス周辺の池に生息する麦角菌にも含まれていることが判明しました。1960年にホフマンがIUPACでこの発見を発表した際、原始的な菌類と植物というかけ離れた種に含まれることから、当初は信用されませんでした。

LSA合成の謎

菌類と植物という異なる種にLSAが存在する謎は、後の研究で解明されました。1992年、アメリカ大陸原産の雑草スリーピー・グラスからもLSAが発見され、この植物に共生する菌がLSAを産生していることが判明しました。この菌は種子の状態から植物と共生し、共に進化してきたと考えられています。

2000年代には、Ipomoea asarifoliaの葉の分泌腺に生息する lasaF 13 と命名された菌類が、麦角アルカロイドを合成することが明らかになりました。この菌は、トリプトファンをプレニル化させる触媒となるジメチルアリル・トリプトファン合成酵素のための遺伝子に似たものを持っており、麦角アルカロイドを合成しています。また、この菌は種子に潜んで伝搬されることも判明しました。さらに、タービナ・コリボサからも菌のTcorF O1が見つかり、これらが麦角菌とは異なる系統であることから、新たにPeriglandu属という分類が設けられ、P.ipomoeae、'P.turbinaeと命名されました。

参考文献

A.ホッフマン、堀正訳、榎本博明訳、福屋武人監訳『LSD-幻想世界への旅』新曜社、1984年。ISBN 4788501821。 LSD-MEIN SORGENKIND, 1979.
ジム・デコーン 著、竹田純子、高城恭子 訳『ドラッグ・シャーマニズム』1996年。ISBN 4-7872-3127-8。 Psychedelic Shamanism, 1994.

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