リターン・オブ・ザ・マンティコア

『リターン・オブ・ザ・マンティコア』は、プログレッシブ・ロックの重鎮、エマーソン・レイク・アンド・パーマー（ELP）が1993年にリリースしたCD4枚組のボックスセットです。この作品は、彼らの音楽キャリアを網羅的に振り返る内容となっており、ファンにとってはまさに宝箱のような存在と言えるでしょう。

収録内容は、ELPのデビュー・アルバムから1992年のアルバム『ブラック・ムーン』までの代表的な楽曲をほぼ網羅。さらに、1970年代の貴重な未発表音源や、1993年に新たに録音された特典音源も収録されています。既発曲だけでなく、未発表音源も楽しめるのが、このボックスセットの大きな魅力です。

1970年代の未発表音源として、「ロンド（Live）」、「プレリュード・アンド・フーガ」、「ボ・ディドリー」の3曲が収録されています。「ロンド」は、キース・エマーソンがELP結成前に在籍していたザ・ナイスの楽曲で、デイヴ・ブルーベックの「Blue Rondo à la Turk」を大胆にアレンジしたものです。ELPのコンサートでも頻繁に演奏され、バッハの「イタリア協奏曲」や「トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565」の一節が組み込まれるなど、クラシック音楽の要素を取り入れた斬新な構成が特徴です。「プレリュード・アンド・フーガ」はフリードリヒ・グルダの作品で、ライブ・アルバム『レディース・アンド・ジェントルメン』でも一部が演奏されていました。「ボ・ディドリー」は、ELPの3人が共作したインストゥルメンタル曲です。

特典音源として、1993年7月と8月にロサンゼルスのグッドナイト LA スタジオで録音された6曲がDisc 1に収録されています。これらの楽曲は、ELPのルーツや音楽的な影響を垣間見ることができる興味深い内容です。

1曲目の「タッチ・アンド・ゴー」は、エマーソンとグレッグ・レイクがコージー・パウエルと結成したエマーソン・レイク・アンド・パウエルの楽曲のカバー。オリジナルはハ短調ですが、本作ではイ短調に転調されています。2曲目の「ハング・オン・トゥ・ア・ドリーム」は、ティム・ハーディンの楽曲のカバーで、ザ・ナイスも過去に演奏しています。3曲目の「21世紀のスキゾイド・マン」は、レイクがELP結成前に在籍していたキング・クリムゾンの楽曲のカバー。4曲目の「ファイアー」は、カール・パーマーがELP結成前に在籍していたクレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンの楽曲のカバー。5曲目の「展覧会の絵」は、ELPが過去に発表した組曲を短縮し、キーを低くしたバージョンです。6曲目の「夢みるクリスマス」は、レイクがソロで発表した楽曲のカバーとなっています。

このボックスセットのプロモーションのため、キース・エマーソンが1993年末に来日。同時期にディープ・パープルも来日しており、キーボードマガジンの企画で、エマーソンとジョン・ロードという、70年代のロックシーンを代表するキーボード奏者同士の対談が実現しました。これは、プログレッシブ・ロックファンにとっては夢のような企画だったと言えるでしょう。

『リターン・オブ・ザ・マンティコア』は、ELPの音楽的な軌跡を辿る上で欠かせない作品であり、プログレッシブ・ロックの歴史においても重要な位置を占める作品です。

もう一度検索