リチャード・ベッドフォード・ベネット

リチャード・ベッドフォード・ベネット：カナダの激動期を率いた政治家

リチャード・ベッドフォード・ベネット（Richard Bedford Bennett, 1st Viscount Bennett、1870年7月3日 - 1947年6月26日）は、カナダの政治家であり、保守党の党首として、1930年から1935年までカナダの首相を務めました。彼の政治キャリアは、世界恐慌という未曽有の経済危機と深く結びついており、その政策はカナダ社会に大きな影響を与えました。

生い立ちと初期のキャリア

1870年、ニューブランズウィック州のホープウェルで生まれたベネットは、教師、弁護士としてのキャリアを積み重ね、政治の世界へと足を踏み入れました。1909年にはアルバータ州の下院議員に選出され、1911年にはカナダ連邦の下院議員として活動を始めました。その後、1921年に法務大臣、1926年には財務大臣を歴任し、政治家としての地位を確立しました。

保守党党首と首相就任

1927年、ベネットは保守党の党首に就任し、1930年の選挙で、当時の首相であったマッケンジー・キング率いる自由党から政権を奪取しました。この背景には、世界恐慌の影響で経済が混乱し、自由党政権への国民の不満が高まっていたことが挙げられます。ベネットは、従来の自由放任政策を批判し、雇用の創出を公約として掲げ、国民の支持を得ました。

首相としての政策と課題

首相就任後、ベネットはイギリス帝国との経済的な結びつきを強化しようと、オタワ会議（帝国経済会議）を主導しました。しかし、参加各国の利害が一致せず、期待された成果を上げることはできませんでした。また、1935年からはアメリカのニューディール政策を模倣した「カナダ版ニューディール」に着手しました。この政策は、中央政府による強力な経済統制を特徴としていましたが、州政府や民間企業の反発を招き、国民の支持を得ることができませんでした。

政権喪失と晩年

それまでの経済対策が効果を発揮しなかったこともあり、1935年の選挙でベネットはマッケンジー・キングに敗北し、政権を失いました。カナダ版ニューディールも短期間で挫折することになりました。1938年に政界を引退した後、イギリスに移住し、そのままイギリスで永住しました。その後、1945年から1947年にかけて、科学技術産業振興協会（王立技芸協会）の会長を務めるなど、カナダ以外の分野でも活躍しました。1947年、ベネットはサリー州のマイクルハムで生涯を終えました。

まとめ

リチャード・ベッドフォード・ベネットは、世界恐慌という未曽有の経済危機の中で、カナダの舵取りを任された政治家でした。彼の政策は、当時の混乱した社会情勢を反映したものであり、その功績と失敗は、カナダの歴史において重要な教訓となっています。首相としての短い期間ではありましたが、カナダ社会に大きな足跡を残しました。

参考文献

* 木村和男編『新版世界各国史23 カナダ史』 山川出版社、1999年

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