リチャード・ボイル (第3代バーリントン伯爵)

第3代バーリントン伯爵リチャード・ボイル：18世紀イギリス建築の巨匠

1694年4月25日、ヨークシャーに生まれたリチャード・ボイルは、裕福なアングロ・アイリッシュ貴族の家に生まれました。彼は第2代バーリントン伯爵チャールズ・ボイルとジュリアナ・ノエルの子として、特権的な環境で育ちました。名門貴族としての地位を受け継ぎながらも、政治には関心を示さず、芸術、とりわけ建築に情熱を注いだことから「芸術のアポロン」「建築家伯爵」と呼ばれました。彼の曾祖父は、ボイルの法則で有名なロバート・ボイルです。

パラディオ様式建築への貢献

ボイルの最も重要な功績は、イギリスとアイルランドにおけるパラディオ様式の復興です。イタリアの建築家アンドレア・パッラーディオの建築理論に深く傾倒し、その思想をイギリスの建築界に紹介しました。彼は、自身の邸宅であるバーリントン・ハウスをはじめ、ウェストミンスター・スクール、チジック・ハウス、ノースウィック・パークなど、数々の重要な建物の設計、あるいは改築に携わりました。これらの建物は、今日でもイギリス建築史において重要な位置を占めています。

充実した生涯と多様な才能

9歳の時に父を亡くし、伯爵位と広大な土地を相続したボイルは、若い頃から音楽にも造詣が深く、ヘンデルやフランチェスコ・バルサンティといった著名な音楽家と交流を持ちました。また、ヨーロッパ各地への旅行を通じて、建築や芸術に関する知識を深め、洗練された審美眼を磨きました。彼は、パッラーディオの著作『建築四書』を携えてイタリアを旅行し、自ら詳細な書き込みを行うほど熱心に研究しました。

ボイルは、単なるパッラーディオ様式の模倣者ではありませんでした。彼は、イニゴー・ジョーンズやジョン・ウェッブといった過去の巨匠の作品を研究し、それらを基に独自の解釈を加え、新しいパラディオ様式を創造しました。彼の建築作品には、古典的な美しさの中に、独自の洗練されたセンスが感じられます。

彼は、建築家としてだけでなく、優れたパトロンとしても知られていました。多くの才能ある建築家やデザイナーを支援し、イギリスの建築界の発展に貢献しました。ウィリアム・ケントやヘンリー・フリッツクロフトといった建築家たちとの協働を通じて、ネオパラディオ様式はイギリスの建築界に広く浸透していきました。

後世への影響

ボイルの死後も、彼の建築思想はイギリスの建築界に大きな影響を与え続けました。彼の作品は、多くの建築家に模倣され、ネオパラディオ様式は、イギリスのカントリーハウスや公共建築の主要な様式の一つとなりました。ボイルの建築への貢献は、今日のイギリスの建築風景を形作る上で重要な役割を果たしました。

家族と晩年

1720年、ボイルはドロシー・サヴィルと結婚し、3人の娘をもうけました。しかし、娘たちの結婚生活は不幸なものでした。長女ドロシーは早世し、次女シャーロットも若くして亡くなりました。ボイル自身も1753年12月15日に亡くなり、男子がなかったため、バーリントン伯爵位は断絶しました。

参考文献

Arnold, Dana (Ed.), Belov'd by Ev'ry Muse. Richard Boyle, 3rd Earl of Burlington & 4th Earl of Cork (1694–1753). Essays to celebrate the tercentenary of the birth of Lord Burlington. London, Georgian Group. 1994. ISBN 0-9517461-3-8
Harris, John, The Palladians. London, Trefoil. 1981. RIBA Drawings Series. ISBN 0-86294-000-1
Lees-Milne, James, The Earls of Creation. London, Century Hutchinson. 1986. ISBN 0-7126-9464-1
Wilton-Ely, John (Intro.), Apollo of the Arts: Lord Burlington and His Circle. Nottingham University Art Gallery. 1973.
Wittkower, Rudolf, Palladio and English Palladianism*. London, Thames and Hudson. Rep. 1985. ISBN 0-500-27296-4

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