リチャード三世 (1912年の映画)

映画『リチャード三世』について

映画『リチャード三世』（Richard III）は、ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲を基にした、1912年制作の長編映画です。フレデリック・ウォードが主人公リチャード三世を演じ、上映時間は55分。フランスとアメリカ合衆国の共同制作で、フィルム・ダール社が制作を担当しました。

制作の背景

この映画は、当時の演劇界で活躍していたフレデリック・ウォードを主演に迎え、映画監督には、それ以前に『ギーズ公の暗殺』や『椿姫』などを手掛けたフランス人監督アンドレ・カルメットが名を連ねています。脚本は、シェイクスピアの原作に加え、コレー・シバーによる1699年の翻案作品も参考に、劇作家ジェイムズ・キーンが担当しました。キーンは共同監督としてもクレジットされており、さらにリッチモンド伯役で出演もしています。

撮影は、ニューヨーク州のウェストチェスター郡、シティ島、ロングアイランド湾といった場所で行われました。

公開と再発見

映画公開当時、主演のフレデリック・ウォードは、各地の上映会場に現れて観客に挨拶をしたり、映画フィルムのリール交換中に、劇の抜粋を朗読したりしました。映画自体も、冒頭で現代の服装をしたウォードが劇場の幕の背後から登場し、最後に再び幕の背後に消えるという演出がされています。かつて旅芸人だったウォードは、映画による興行が、一座を組んで各地を巡業するよりも経済的であることに気づいていました。

この映画には、『ヘンリー六世 第3部』から、エドワード王子の殺害と、リチャードによるヘンリー6世殺害の場面が挿入されています。この作品は、アメリカで制作された現存する最古の長編映画であり、シェイクスピア作品を基にした最初の長編映画としても知られています。

1922年には既に失われた映画とされていましたが、1996年にプリントが発見されました。オレゴン州ポートランドのブルーバード劇場の元映写技師ウィリアム・バッファムが、このフィルムをアメリカン・フィルム・インスティチュート（AFI）に寄贈したのです。AFIは、このニトロセルロース製のフィルムを基に新たなプリントを作成し、1912年の公開当時の色彩効果を再現しました。

DVDリリース

2001年6月26日には、キノ・インターナショナルからDVDがリリースされ、エンニオ・モリコーネによる新たな音楽が追加されました。さらに、17分のドキュメンタリー『Rediscovering Richard: Looking Back on a Forgotten Classic』も特典として収録されています。

キャスト

ロバート・ジェムプ：イングランド王エドワード4世
フレデリック・ウォード：グロスター公リチャード
アルバート・ガードナー：ランカスターのエドワード王子
ジェームズ・キーン：リッチモンド伯
ジョージ・モス：トゥレッセル
ハワード・スチュアート：エドワード
バージニア・ランキン：ヨーク
ヴァイオレット・スチュアート：レディ・アン・プランタジネット
ケアリー・リー：エリザベス王妃
カルロッタ・デ・フェリス：エリザベス王女

関連情報

Weinraub, Bernard (1996年9月17日). “Movie History Emerges From a Basement”. New York Times.
フィルムが再発見された映画の一覧
Richard III - American Film Institute Catalog
Richard III - IMDb

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