リック・アデルマン

リック・アデルマン：NBAを彩った名将の軌跡

リック・アデルマン（Richard Leonard Adelman、1946年6月16日生まれ）は、アメリカ・カリフォルニア州出身のバスケットボール選手、そして卓越した指導者です。NBAの舞台で、ポートランド・トレイルブレイザーズ、ゴールデンステート・ウォリアーズ、サクラメント・キングス、ヒューストン・ロケッツ、ミネソタ・ティンバーウルブズといった数々のチームを率い、その手腕を発揮しました。2014年に惜しまれつつも引退を発表。

選手時代：堅実なキャリア

ロヨラ大学卒業後、1968年のNBAドラフトでサンディエゴ・ロケッツ（現ヒューストン・ロケッツ）から7巡目79位指名を受けプロ入り。サンディエゴで2シーズンを過ごした後、ポートランド・トレイルブレイザーズへ移籍し3シーズンをプレイしました。その後、シカゴ・ブルズ、ニューオリンズ・ジャズ、カンザスシティ・キングスなどを経て、1975年に現役を引退しています。

指導者として：名声の確立

1977年、アデルマンは指導者としてのキャリアをスタートさせます。オレゴン州のチェメケタ・コミュニティ・カレッジでコーチを務めた後、ポートランド・トレイルブレイザーズのアシスタントコーチに就任。1989年シーズン途中、ヘッドコーチの解任を受け、暫定ヘッドコーチに昇格すると、チームをプレイオフに導き、正式にヘッドコーチに就任しました。

アデルマンは、ブレイザーズを強豪チームに育て上げ、1990年と1992年にはNBAファイナルに進出、1991年にはウェスタンカンファレンス準優勝という輝かしい成績を残しました。その後、1994年に解任。

1995年、ゴールデンステート・ウォリアーズのヘッドコーチに就任しますが、かつての成功を再現することはできず、2シーズンで解任されました。

1998年、サクラメント・キングスのヘッドコーチに就任。アデルマンの指導の下、キングスはウェスタンカンファレンス屈指の強豪へと変貌を遂げ、アデルマン自身も指導者としての名声を確立しました。在任中は毎年のようにプレイオフに進出しています。

当時のキングスは、シャキール・オニールとコービー・ブライアントを擁するロサンゼルス・レイカーズと激しいライバル関係にありました。2000年のプレイオフでは、レイカーズのフィル・ジャクソンがアデルマンの指導方針をヒトラーに例えるなど、コート外での舌戦も繰り広げられました。しかし、レイカーズの3連覇を阻止することはできず、ティム・ダンカン率いるサンアントニオ・スパーズにも苦杯をなめました。2006年、キングスはアデルマンとの契約を更新しないことを発表しました。

2007年、アデルマンはヒューストン・ロケッツのヘッドコーチに就任。就任1年目には、主力選手の故障に見舞われながらも、チームをNBA史上2番目の長さとなる22連勝に導きました。

2011年、ミネソタ・ティンバーウルブズのヘッドコーチに就任。3シーズン指揮を執りましたが、プレイオフ進出は果たせず、2014年に引退を発表しました。

指導哲学：選手の自主性を尊重

アデルマンは、選手の自主性を重んじる「プレイヤーズ・コーチ」として知られています。その実績は名将と呼ぶにふさわしいものですが、一方で、試合の重要な場面でも選手に任せるスタイルは「無策」と批判されることもありました。しかし、彼が監督を務めたチームが大きく成長したのは紛れもない事実であり、プレイオフでの敗退も、マイケル・ジョーダンやシャキール・オニールといったスーパースターが対戦相手にいたことが大きな要因であるという擁護論も存在します。また、プレイオフのレイカーズ戦では、ロバート・オーリーに劇的な逆転シュートを決められるなど、不運な場面もありました。

リック・アデルマンは、NBAの歴史に名を刻む名指導者として、多くの人々に記憶されることでしょう。

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