リッチコミュニケーションサービス

リッチコミュニケーションサービス（RCS）とは

リッチコミュニケーションサービス（Rich Communication Services, RCS）は、従来のSMS（ショートメッセージサービス）やMMS（マルチメディアメッセージングサービス）に代わる、より高度なメッセージング体験を提供する規格です。単なるテキストメッセージの送受信にとどまらず、高機能なチャット、ファイル共有、音声・ビデオ通話など、さまざまなコミュニケーション手段を統合的に利用できるのが特徴です。

RCSの概要

RCSは、携帯電話のインスタントメッセンジャーを端末レベルで実現するための規格で、ユーザーは電話番号を基に相手と通信を行います。従来のSMSやMMSとは異なり、IPマルチメディアサブシステム（IMS）を使用し、インターネットプロトコル（IP）上で実装されています。これにより、異なる通信キャリア間でも相互に接続でき、SMS・MMSよりも大きなデータ容量のファイル送受信が可能になりました。

RCSの歴史

RCSは、2007年に欧米の通信キャリアによって設立された組織「The Rich Communication Suite (RCS) industry initiative」によって考案され、2008年にGSM Associationのプロジェクトとして採用されました。初期の仕様策定は順調に進みましたが、仕様改定のペースが速すぎたため、サプライヤーは製品提供に躊躇し、通信キャリアもRCSサービスを提供できませんでした。そのため、規格の簡素化が提案され、「RCS-e」として再定義されました。

2015年には、GoogleがRCS技術を持つJibe Mobileを買収し、RCSの普及を加速させました。2016年には、異なる通信キャリア間での相互接続を保証する「Universal Profile」がリリースされ、RCSの標準化が進みました。また、2024年にはAppleがiOSでのRCSサポートを発表し、iPhoneユーザーもRCSを利用できるようになりました。

RCSの主な機能

RCSは、以下のような多岐にわたる機能を提供します。

拡張電話帳: プレゼンス情報（オンライン状況など）を表示する高機能な電話帳
高度なメッセージサービス: SMS、チャット、インスタントメッセンジャーの機能を統合
メッセージング: 既読通知などの機能を持つショートメッセージサービス
チャット・グループメッセージ: タイムライン形式の吹き出し型チャット、スタンプ、添付ファイルなどの機能
音声メッセージ: ボイスメッセージの送受信
音声通話・ビデオ通話: IP電話による音声通話とビデオ通話
位置情報の共有: 現在位置を相手に共有
ファイル転送: 写真、動画などのファイルの送受信
エンリッチコールサービス: 通話中にコンテンツを共有する機能（ファイル共有、画面共有など）

RCSの仕様

RCSは、3GPPやOpen Mobile Allianceで規定された様々な規格や、SMSと組み合わせて利用されます。RCSの仕様で標準化されている主なサービスは以下の通りです。

スタンドアローンのインスタントメッセージ
1対1のチャット
グループメッセージ
ファイル転送
コンテンツの共有
プレゼンス情報
音声通話（IP電話）
ビデオ通話
位置情報の共有
音声メッセージ
ネットワーク型ブラックリスト
利用可能な機能の問い合わせ

Universal Profileとjoyn

RCSの普及を促進するため、相互運用性を高める規格として「Universal Profile」と「joyn」が策定されました。

Universal Profile: 通信キャリア間の互換性のための機能、チャット、グループメッセージ、ファイル転送、音声メッセージ、通話中の画面共有、マルチデバイス対応などを規定。
joyn: RCSの初期の実装仕様で、1対1チャット、グループメッセージ、ファイル共有、ビデオチャットなどを必須機能として規定。

RCSの普及状況

RCSは、世界中で利用が広がっており、多くの通信キャリアや端末メーカーが対応しています。AndroidやWindows 10 MobileではOSレベルでUniversal Profileに対応しており、通信キャリアが対応していれば、すぐに利用を開始できます。また、相互運用性を担保するための規格Universal Profileは、2018年4年の時点で通信キャリア55社・携帯電話機メーカー11社と、OSベンダー2社（Google・Microsoft）の、合計68社がサポートしています。

日本におけるRCSの展開

日本においては、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が「＋メッセージ」という名称でRCSサービスを提供しています。ただし、日本の3大キャリア間でのみ相互接続が可能で、国際的な相互接続はまだ実現していません。また、楽天モバイルも「楽天Link」という独自のRCSサービスを提供しています。

＋メッセージ: 日本の3大キャリアが提供するRCSサービス。SMSにも対応したアプリを使用。
楽天Link: 楽天モバイルが提供するRCSサービス。Wi-Fiや携帯電話回線を利用した音声通話やメッセージングが可能。

まとめ

RCSは、従来のSMSやMMSに代わる次世代のコミュニケーション規格として、世界的に普及が進んでいます。高機能なチャット、ファイル共有、音声・ビデオ通話などの機能を統合し、より豊かなコミュニケーション体験を提供します。今後、さらに多くの通信キャリアや端末メーカーがRCSに対応することで、ユーザーはより便利で快適なコミュニケーションが可能になるでしょう。

関連項目

ショートメッセージサービス（SMS）
マルチメディアメッセージングサービス（MMS）
Facebook Messenger
iMessage
LINE (アプリケーション)
Skype
WhatsApp

参考文献

* GSMA | RCS - Future Networks

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