リトアニア・ソビエト社会主義共和国 (1918年-1919年)

リトアニア・ソビエト社会主義共和国とは

リトアニア・ソビエト社会主義共和国（以下、リトアニア・ソビエト）は、1918年から1919年にかけて存在した短命な国家です。表面上はリトアニア人自身による社会主義革命の成果であるかのように装っていましたが、実際にはソビエト・ロシアがリトアニア・ソビエト戦争を正当化するための傀儡政権でした。ソ連の公式プロパガンダでは、「ソビエト・ロシアがこの共和国を承認した事実は、バルト諸国に対する強欲という帝国主義者のデマを打ち砕くものである」と主張していました。

建国前史

第一次世界大戦が終結すると、ドイツ軍は東部占領地域から撤退を開始しました。これに伴い、ボリシェヴィキ政府はリトアニアの独立を保障していたブレスト＝リトフスク条約を破棄し、赤軍は西へ侵攻を開始しました。その目的はプロレタリアによる世界革命であり、バルト三国やポーランド、ウクライナなど、各地の独立運動をソビエト体制に取り込むことでした。

リトアニア・ソビエトの建国

リトアニアにおける共産主義運動は、1918年の晩夏までは低調でした。しかし、同年10月にリトアニア共産党（LKP）が設立され、社会主義革命を目指すことが決定されました。この計画はモスクワからの支援と指導を受けており、12月8日にはLKP幹部のヴィンツァス・ミツケヴィチュス＝カプスカスが率いる暫定革命政府が発足し、リトアニア・ソビエト社会主義共和国の独立が宣言されました。しかし、この政府は赤軍に追随する形で設立された可能性が高いとされています。

独立宣言は12月19日にソ連の新聞で初めて公表され、その後ラジオで放送されました。ミツケヴィチュス＝カプスカスの草案では、ソビエト・ロシアとの緊密な関係を強調しており、彼自身は民族自決を否定する立場でした。

リトアニア・ソビエトはロシア・ソビエト連邦社会主義共和国に支援を求め、12月22日に正式に承認されました。同日、赤軍は国境の要衝を確保しましたが、暫定政府は自らの存在を宣伝することができず、事実上解散状態となりました。初期のリトアニア軍は赤軍の侵攻を食い止められず、1919年1月には首都ヴィリニュスが陥落し、2月末には国土の大部分が占領されてしまいました。

政府の脆弱性

ロシアではソビエト体制は工業労働者階級によって支えられていましたが、リトアニアではこの階級は脆弱でした。そのため、リトアニア・ソビエトはロシアに頼らざるを得ず、ロシアは100万ルーブルの融資を認めました。リトアニア・ソビエトは独自の軍を持たず、赤軍に依存していました。ミツケヴィチュス＝カプスカスは、地元民を赤軍に徴兵することは逆効果だと主張しました。赤軍は占領地域で莫大な戦費を要求し、経済は混乱しました。

リトアニアではカトリックとナショナリズムが根強く、ソビエトが標榜する国際主義や無神論は受け入れられませんでした。このことが赤軍の撤退を後押しする要因となりました。

解散とその後

1919年2月、リトアニアとドイツの義勇軍が赤軍の侵攻を食い止め、臨時首都カウナスの陥落を防ぎました。軍事的な困難と地元民の反発に直面したソビエトは、リトアニア・ソビエトと白ロシア・ソビエト社会主義共和国を合併させ、リトベル共和国を形成することを決定しました。しかし、この新国家も影響力に乏しく、ポーランド・ソビエト戦争中に領土を奪われ、崩壊しました。

その後、赤軍はヴィリニュスを奪回しましたが、ソビエトは都市をリトアニアに返還せず、ソビエト共和国を再建しようとしました。しかし、赤軍はワルシャワの戦いで敗北し、ポーランド軍に押し戻されました。このポーランドの勝利が、リトアニアをソビエトのクーデターから守ったという歴史家もいます。

戦間期のソビエトとリトアニアの関係は概ね良好でしたが、第二次世界大戦勃発後、1940年にソ連はリトアニアを占領しました。これはソ連のプロパガンダでは「革命的大衆によるソビエト権力の回復」と説明されました。

リトアニア・ソビエト社会主義共和国は、短命な国家でしたが、その存在はソビエトの東欧政策やリトアニアの歴史において重要な意味を持っています。

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