リトル・マガジン

リトル・マガジンの概要

リトル・マガジン（little magazine）という言葉は、通常「小雑誌」を指しますが、特に20世紀前半のアメリカにおいて、商業的な利益を追求せず、前衛的かつ実験的な作品や評論を数多く掲載する文芸雑誌のことを指すことが多いです。それらは主に1920年代に栄え、現代においても同様の非商業的な文芸や思想を扱うものを指して使われています。

日本では、同人誌の中でも寄稿者が同人に限られない「寄稿誌的性格」を強く持つものがリトル・マガジンとみなされることがあります。戦後の日本において、主に思想系の小雑誌を対象とした包括的な研究が行われており、田村紀雄はそれらを「新しい理論や文化、芸術、文学、信仰などを問う実験的な雑誌」として定義しています。

リトル・マガジンの先駆的事例

リトル・マガジンにおける先駆的な例としては、1850年にイギリスで発行された『ジャーム (The Germ)』や、1894年から1897年まで発行された『イエロー・ブック (The Yellow Book)』、アメリカにおける『ダイアル (The Dial)』が挙げられます。これらの雑誌は、商業的な要素を排除し、アートや文学に対する新しい視点を提示しました。

アメリカにおけるリトル・マガジン

20世紀前半のアメリカにおいて、リトル・マガジンは「ビッグ・マガジン」に対して、発行部数が500部から5000部以下の小規模なものであるという特長がありましたが、その小ささは単に規模の問題ではありませんでした。前衛的な表現や思想に関心を持つ限られた知的読者層に向けて発信されていたのです。

例えば、『リトル・レヴュー (The Little Review)』や『セヴン・アーツ (The Seven Arts)』、また『サザン・レビュー (The Southern Review)』などが、リトル・マガジンとして知られています。これらの雑誌は、しばしば短命であったものの、時には長く存続するものもありました。『ポエトリー (Poetry)』は1912年から刊行が続いており、また『パルチザン・レビュー (Partisan Review)』は1934年から2003年まで続きました。

リトル・マガジンの国際的な展開

リトル・マガジンはアメリカだけでなく、他国でも見られる現象です。イギリスでは、モダニズム文学を扱った『エゴイスト (The Egoist)』や、T・S・エリオットが運営していた『クライテリオン (The Criterion)』がリトル・マガジンに分類されます。カナダでは、1924年に創刊された『カナディアン・フォーラム』などがあり、これらはイギリスの伝統から独立した独自の文学的なアプローチを形成しました。フランスでも、サルトルが創刊した『レ・タン・モデルヌ (Les Temps modernes)』や、ポスト構造主義の『テル・ケル (Tel Quel)』がリトル・マガジンとして知られています。

日本でも、文芸同人誌として『明星』や『白樺』といった雑誌がリトル・マガジンに含まれることがあります。また、『試行』という雑誌は、その独自の運営形態から「リトル・マガジンそのもの」と評価されています。

結論

リトル・マガジンは、商業性を排した実験的な作品を発表するための場として、多様な思想や芸術を発信する重要な役割を果たしてきました。これらの雑誌は時代や地域を超えて、新しい視点や価値観をもたらし続けているのです。

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