リバティ L-12

リバティ L-12エンジンの概要

リバティ L-12はアメリカで設計された航空機用の水冷V型12気筒エンジンであり、455 hpという高い出力を誇りました。その設計においては、パワーウェイトレシオや量産効率が重視され、航空機の性能向上に大いに寄与しました。このエンジンは、排気量27リットル（約1,649立方インチ）を持ち、約400 hp（約300 kW）の出力を達成。同時期の他のエンジンに比べて非常に高性能でした。

開発の経緯

リバティ L-12の開発は、1917年5月に遡ります。アメリカがドイツに対して宣戦布告した直後、航空機生産委員会が結成され、エンジン設計の専門家であるジェシー・G・ヴィンセントとエルバート・J・ホールの両氏が呼び出されました。彼らは、イギリスやフランスといった他国と競争するために、新しいエンジン設計に取り組む命を受けました。設計は急ピッチで進められ、たった5日後には基本設計図が完成しました。

1917年7月には、デトロイトにあるパッカード社の工場で初の8気筒試作機が完成し、続いて12気筒版が8月に試験に合格しました。

生産と展開

1917年の秋、アメリカ陸軍は22,500基のリバティエンジンを注文し、ビュイックやフォードなどの自動車メーカーに生産を割り当てました。このモジュール設計により、エンジンの生産は効率的に行われ、特にフォード社の鋼板の切断やプレス技術の改善により、シリンダー生産が一気に向上しました。結果、430,000基を超えるシリンダーと3,950台のエンジンが生産されました。

冷戦後も生産は続き、1917年から1919年の間に、トータルで20,478基の生産を達成しました。

技術的特徴

リバティエンジンは、シリンダーの配置やバルブ駆動の設計において先進的な要素が組み込まれていました。モジュール設計により、様々なエンジンバリエーションが生み出され、直列およびV型の構造が採用されました。オーバーヘッドカムシャフトを使い、相互に連結されたシリンダーは非常に効率的な動作を実現。デルコ・エレクトロニクス製の点火装置や、ゼニス製のキャブレターによって性能の向上が図られました。

さまざまな用途

リバティ L-12は、航空機や戦車など多岐にわたる応用がありました。航空機ではエアコー DH.4やブレゲー B2に搭載され、戦車ではリバティ重戦車が開発されるなど、国防の重要な一翼を担いました。また、自動車の最高速トライアルカーにも装着され、その可能性を示しました。

現在の状況

現在でもリバティ L-12エンジンの現存が確認されており、レストアを施されたものも多く存在します。オーストラリア、英国、米国の各地には、リバティエンジンを展示する博物館や施設があります。保存されたリバティ L-12のいくつかは稼働状態にあり、エアショー等でその力強いエンジン音を響かせています。エンジンの素晴らしい性能は、航空業界の発展や戦車技術の向上に寄与した重要な技術的資産として、今なお評価されています。

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