リパブリック (アルバム)

ニュー・オーダーのアルバム『リパブリック』は、1993年発表の彼らの代表作の一つです。このアルバムは、バンドの歩みにおいて重要な転換期を象徴する作品であり、音楽史に大きな足跡を残しました。

前作『テクニーク』発表後、メンバーはそれぞれソロ活動に没頭しました。ピーター・フックはバンド「リヴェンジ」を結成し、バーナード・サムナーはジョニー・マーとのユニット「エレクトロニック」で活動するなど、個性豊かな活動を展開しました。一方、スティーヴン・モリスとジリアン・ギルバートは「ジ・アザー・トゥー」を結成、アルバム制作を進めていました。

しかし、1992年11月、ニュー・オーダーの古巣であるファクトリー・レコードが倒産。この衝撃的な出来事は、ニュー・オーダーの活動に大きな影を落としました。移籍先を探さなければならなくなっただけでなく、「ジ・アザー・トゥー」のアルバムはリリース延期を余儀なくされました。

最終的にニュー・オーダーはロンドン・レコードに移籍。そして、この新しいレーベルからの第一弾作品として発表されたのが『リパブリック』です。アルバム制作においては、バーナード・サムナーと他のメンバーとの間で深刻な対立が発生し、バンド解散の危機に瀕しました。メンバー間の確執は深まり、アルバムリリース後もその溝は解消されず、次のアルバム『ゲット・レディー』発表まで8年の歳月を費やすことになります。

にもかかわらず、『リパブリック』は前作に続きチャート1位を獲得する成功を収めました。複雑な制作過程とメンバー間の対立を乗り越えて生まれた力作であり、そのサウンドはニュー・オーダーの成熟度と、彼らが抱える葛藤を反映していると言えるでしょう。

収録曲には、「Regret」「World」「Ruined in a Day」「Spooky」など、ニュー・オーダーの代表曲ともいえる楽曲が収録されています。これら楽曲は、シングルカットされ、高い人気を博しました。日本盤にはボーナストラックとして「Regret (Sabres Slow'n'Low)」、「Regret (Sabres Fast'n'Throb)」の2曲が追加収録されています。

アルバムのプロデュースは、ステファン・ヘイグが担当し、エンジニアリングにはサイモン・ジョージリー、マイク・スパイク・ドレイク、オーウェン・モリス、リチャード・チャペルといった錚々たるメンバーが参加しています。また、プログラミングはゲイリー・バーンズ、デザインはピーター・サヴィルが手がけました。

興味深いことに、『リパブリック』は当初、1992年10月にファクトリー・レコードからリリースされる予定でした。ファクトリー・レコードのボックスセット『パラティン』に付属するブックレットには、その計画が記載されています。しかし、ファクトリー・レコードの倒産により、リリース元がロンドン・レコードに変更され、日本盤では発売元が日本コロムビアからポリドール（現在のユニバーサルミュージック）に変更となりました。また、このアルバムから歌詞と対訳が付属するようになり、日本のリスナーにとってより親しみやすいものとなりました。

『リパブリック』は、バンド内部の葛藤やレコード業界の変動といった、困難な状況を乗り越えて制作されたアルバムです。にも関わらず、高い音楽性と商業的な成功を収めたこの作品は、ニュー・オーダーのキャリアにおいて、大きな転換点であり、重要な位置を占める作品として、音楽史に刻まれています。

もう一度検索