リパロヴェナトル

リパロヴェナトル：川岸の狩人

リパロヴェナトル( Riparovenator)は、前期[白亜紀]のヨーロッパに生息していた大型の獣脚類恐竜です。その名は「川岸の狩人」を意味し、イギリス南部のワイト島で発見された化石に基づいて、2021年に新属新種として記載されました。

発見と命名

ワイト島の海岸で2013年から2017年にかけて発掘された、未確認のスピノサウルス科化石がリパロヴェナトルの発見へと繋がりました。当初はバリオニクスとされていたこれらの化石は、詳細な分析の結果、新属新種であることが判明。ケラトスコプスと共に、Riparovenator milneraeと命名されました。種小名 milnerae は、著名なイギリスの古生物学者、アンジェラ・ミルナーへの献名です。

ホロタイプ標本は、頭骨の一部(前上顎骨、頭蓋骨の一部、涙骨、前前頭骨)と、鼻骨、尾椎骨などから構成されます。これらの化石は、ワイト島のBrighstone砂岩層とChilton Chine砂岩層の間、もしくは付近から発見されました。特徴的なのは、植物片の少ない堆積物から発見された点です。

形態と特徴

リパロヴェナトルは、全長約7.5メートルと推定されています。他のバリオニクス亜科の恐竜と比較することで、リパロヴェナトル独自の形態学的特徴が明らかになっています。例えば、鼻骨の形状、蝶形骨のトルコ鞍(sella turcica)の背側縁、後頭関節丘、下顎の形状、基翼状突起など、いくつかの骨格の特徴が、バリオニクスやケラトスコプスとは異なっていることが分かっています。これらの特徴は、リパロヴェナトルを他のスピノサウルス科から明確に区別する上で重要な要素となっています。

系統関係

系統解析の結果、リパロヴェナトルはバリオニクス亜科に属し、ケラトスコプスと姉妹群を形成することが示唆されています。この発見は、スピノサウルス科の起源がヨーロッパにあったという説を支持する重要な証拠となります。さらに、分析からは、バリオニクス亜科のスコミムスとスピノサウルス亜科のシギルマッササウルス、スピノサウルスは、それぞれ独立してアフリカ大陸へ分布を広げた可能性が示唆されています。

生態

「川岸の狩人」という名前が示す通り、リパロヴェナトルは水辺の環境に適応していたと考えられています。その長い吻部と歯の特徴から、魚食性であった可能性が高いと推測されています。しかし、その食性や生態については、さらなる研究が必要とされています。

まとめ

リパロヴェナトルの発見は、前期白亜紀のヨーロッパにおけるスピノサウルス科の多様性と進化を理解する上で非常に重要な発見です。今後の研究により、その生態や進化史に関するさらなる知見が得られることが期待されます。ワイト島の地層からは、今後新たな恐竜化石が発見される可能性もあり、今後の研究の進展が注目されます。

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