リボン (GUI)

リボンとは

リボン（英: ribbon）とは、マイクロソフトが提唱した、アプリケーションソフトウェアの操作コマンドメニューの表示領域におけるグラフィカルユーザーインターフェイス (GUI) 方式の一種です。従来のメニューバーとツールバーを置き換えるものとして、Microsoft Office 2007で初めて搭載されました。その後、Windows 8以降ではWindows エクスプローラーなどOSのインターフェイスにも採用されましたが、Windows 11で廃止されました。

特徴

リボンの最大の特徴は、従来のツールバーの4～5行分に相当する高さの領域に、テキストやアイコンを使用したコマンド（ボタン）を配置し、それらを分類ごとにタブでグループ化している点です。これにより、ユーザーは直感的に目的のコマンドを見つけやすくなります。また、タブ上でマウスホイールを回転させることで、タブの切り替えも可能です。

従来のメニューバーとは異なり、リボンではアプリケーション開発者が、よく使われるコマンドを大きく目立つように配置したり、あまり使われないコマンドを小さく配置したりするなど、重要度に応じて柔軟に表示を調整できます。これにより、ユーザーはより効率的に作業を進めることができるようになりました。

デメリット

リボンにはメリットがある一方で、デメリットも存在します。特に解像度の低いディスプレイでは、リボンが画面上の場所を大きく占めてしまい、作業領域が狭くなるという問題がありました。また、横幅が狭い場合、サブコマンドの表示が省略され、ドロップダウンリストから選択する必要が生じることもありました。

しかし、これらのデメリットを軽減するために、リボンを採用した多くのアプリケーションでは、タブのダブルクリックやショートカットキーを使って、タブのみを表示し、必要なときにだけボタン類を表示させるリボンの最小化機能が搭載されています。Office 2010以降では、ウィンドウの右側に「リボンの最小化」ボタンが用意され、より手軽にリボンを最小化できるようになりました。

ギャラリーとリアルタイムプレビュー

リボンUIの導入に伴い、新たなUIとしてギャラリー機能が追加されました。ギャラリーとは、視覚的に作業結果を想定できるコマンドのセットです。また、ギャラリーなどにマウスオーバーするだけで結果をプレビューできるリアルタイムプレビュー機能も搭載されました。これにより、ユーザーは実際にコマンドを実行する前に結果を確認でき、「元に戻す」といった手間を省くことができます。ただし、リアルタイムプレビュー機能はハードウェアの性能を要求するため、設定で有効/無効を切り替えられるようになっています。

クイックアクセスツールバー

リボンには常にクイックアクセスツールバーが表示されます。ユーザーはリボンからコマンドをクイックアクセスツールバーに追加したり、逆に削除したりすることができます。これにより、リボンが最小化されている場合や、目的のコマンドがあるタブが表示されていない場合でも、よく使うコマンドにすぐにアクセスできます。

キーボード操作性の向上

従来のツールバーをキーボードで操作するには、複数のキーを押す必要があったり、操作自体が受け付けられない場合がありました。しかし、リボンやクイックアクセスツールバーのコマンドはキーボードから簡単に操作できるようになり、キーボードを多用するユーザーの操作性が向上しました。

従来のインターフェイスとの互換性

リボンUIは、従来のインターフェイスとの互換性も考慮して設計されています。各操作のキーボードショートカットはほとんど共通しており、アイコンデザインも旧来からあるものは変更が少ないため、従来のインターフェイスに慣れたユーザーもスムーズに移行できるようになっています。また、Office 2003以前のインターフェイスを再現するアドインもサードパーティーから提供されています。

導入の経緯

リボンUIは、アプリケーションの操作コマンド数が年々増大し、従来のインターフェイスでは対応しきれなくなってきたという問題を解決するために導入されました。例えば、Word 1.0では100個のコマンドと2本のツールバーでしたが、Word 2003では約1500個のコマンドと31本のツールバーになりました。従来のメニューバーとツールバーでは、コマンドが重複して配置されていたり、どちらか一方にしか存在しないコマンドがあったりと、非常に複雑になっていました。このため、ユーザーは必要な機能を簡単に見つけることができず、操作に手間取っていました。

マイクロソフトは、ユーザーが必要なコマンドをすばやく簡単に見つけられるように、リボンUIの採用に踏み切りました。Office 2007では、リボン内のボタンの配置やアイコンのカスタマイズをXMLで定義する必要がありましたが、Office 2010以降では、ユーザー設定で視覚的にリボンをカスタマイズできるようになりました。デフォルトのタブの内容を変更することはできませんが、ユーザー設定の新しいタブを作成したり、デフォルトのタブを非表示にしたりするなど、より自由度の高い設定が可能になっています。

APIと開発ガイドライン

マイクロソフトは開発者向けにAPIを公開し、サードパーティー製アプリケーションソフトウェアにもリボンUIを組み込めるようにしています。リボンUIを構築できるマイクロソフト純正のAPI・ライブラリには、Windows Ribbon Framework (COMコンポーネント)、MFC、WPFなどがあります。

ただし、マイクロソフトはユーザーエクスペリエンスガイドラインでリボンUI採用の判断基準を提示しており、必ずしもリボンUIがすべてのアプリケーションに適しているわけではありません。例えば、Microsoft Visual Studioは膨大な数のコマンドがあるにもかかわらず、バージョン2019においても従来のメニューバー・ツールバー方式が維持されています。

主な導入ソフトウェア

Microsoft Office (バージョン2007以降)
ワードパッド (Windows 7以降)
Microsoft ペイント (Windows 7以降)
Windows エクスプローラー (Windows 8以降)
AutoCAD (バージョン2009以降)
WPS Office (バージョン2012以降)