リポトロピン

リポトロピンについて

リポトロピン（Lipotropin）は、体内で重要な役割を果たすペプチドホルモンであり、主にプロオピオメラノコルチン（POMC）という前駆体から生成されます。下垂体前葉において、POMCは細胞特異的な切断を受け、副腎皮質刺激ホルモン（ACTH）やβ-リポトロピン（β-LPH）に変換されます。

β-リポトロピンの特徴

β-リポトロピンは、ストレス反応に関与するホルモンであり、リポトロピン、リポリティックホルモン、アディポキネティックホルモンなどの名称でも知られています。このホルモンは、91個のアミノ酸から構成され、腺下垂体からACTHと共に分泌されます。β-リポトロピンの主な機能は、脂肪組織からトリアシルグリセロールを分解して脂肪酸を放出することですが、その効果は他のホルモンに比べると比較的弱いとされています。

また、β-リポトロピンは腺下垂体の前葉と中葉において分解され、β-エンドルフィンやγ-リポトロピンなどの産物が生成されます。β-エンドルフィンやメチオニン-エンケファリン（Met-エンケファリン）などの鎮痛作用を持つポリペプチドもこのホルモンに由来しており、そのアミノ酸配列はβ-リポトロピンの中に存在しますが、これらのペプチドは他の前駆体からも生成されることがあります。

γ-リポトロピンについて

γ-リポトロピン（γ-LPH）はPOMCから切断されて生じる58アミノ酸からなるペプチドで、後にβ-エンドルフィンなどに分解されます。これもまた、体内のさまざまな生理的機能に寄与しています。

POMCのプロセッシング

プロオピオメラノコルチンは、241個のアミノ酸からなるポリペプチド前駆体であり、285個のアミノ酸からなるプレプロオピオメラノコルチン（pre-POMC）から生成されます。pre-POMCからは、シグナルペプチド配列の44アミノ酸が切除され、最終的にPOMCが形成されます。このホルモンの遺伝子はヒトの2p23.3染色体に位置しています。POMCは様々な組織で特有の切断を受け、腺下垂体では特に4か所で切断されてACTHとβ-リポトロピンが生成されます。

その切断には、プロホルモン変換酵素などの酵素が関与しており、それぞれの酵素によって異なるプロセッシングが行われます。

臨床における重要性

臨床的には、β-リポトロピンは血液中のACTHレベルが高い状態、例えばアジソン病やネルソン症候群、異所性ACTH産生腫瘍などの疾患においても上昇します。これにより、β-リポトロピンは腺下垂体の機能を示す指標としても利用されています。加えて、日内変動やストレスによる変化も見られるため、これらの変動は生理的なストレス応答を反映していると考えられています。

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