リャザン (ルーシ)

スタラヤ・リャザン：中世ロシアの栄光と滅亡

この記事では、11世紀末から13世紀前半に栄えた中世都市、スタラヤ・リャザンについて解説します。現在のロシア・リャザン州スパッスク地区にその遺構が残るスタラヤ・リャザンは、かつてリャザンと呼ばれ、キエフ・ルーシ期のリャザン公国の首都として繁栄しました。しかし、1237年のモンゴル軍の侵攻によって破壊され、その後、都市機能は現在のリャザン（当時はペレヤスラヴリ＝リャザンスキー）に移転していきました。1778年までは、現在のリャザンがペレヤスラヴリ＝リャザンスキーと呼ばれていたため、歴史的な混乱を避けるため、本稿では、かつての都市を「スタラヤ・リャザン」、現在の都市を「現リャザン」と表記します。

スタラヤ・リャザンの歴史

スタラヤ・リャザンの最初の記録は、1096年の年代記に見られます。オカ川とセレブリャンカ川の合流地点にある高台に位置するスタラヤ・リャザンは、1060年頃、チェルニゴフ公スヴャトスラフによって建設されたと推測されています。当初の人口は約1500人でしたが、青銅器、陶器、骨細工などの技術を持つ手工業者も居住していました。12世紀半ばには、ルーシ各地からの移民が流入し、都市の防衛設備が整備されました。スタラヤ・リャザンは、ルーシと遊牧民の境界地帯に位置していたため、防衛体制の強化が不可欠だったと考えられます。

防衛設備に囲まれたスタラヤ・リャザンの面積は、48～60ヘクタールにも及び、当時のキエフ・ルーシ最大の都市の一つでした。1250年代後半から1260年代初頭には、リャザン公グレプの治世期にウスペンスキー大聖堂などの主要な建築物が建設されました。13世紀初頭には人口は約8000人に達し、スパッスク、ボリスとグレブ、ウスペンスキーの3つの聖堂が建ち並ぶ繁栄した都市でした。

しかし、1237年、バトゥ率いるモンゴル軍の侵攻を受け、スタラヤ・リャザンは破壊されました。リャザン公とその家族を含む多くの住民が殺害され、この悲劇は『バトゥのリャザン襲撃の物語』として語り継がれています。モンゴル軍との戦いで戦死したヴォエヴォダ・エヴパーチー・コロヴラートは、英雄として民話に伝えられています。

モンゴルの侵攻後もリャザン公国は存続しましたが、首都機能は徐々に現リャザンに移転していきました。1588年まではスタラヤ・リャザンは都市として記録されていますが、17世紀には村となりました。そして、1778年、現在のリャザンが正式にリャザンと命名されたことにより、かつての都市は「スタラヤ・リャザン（古いリャザン）」と呼ばれるようになりました。

スタラヤ・リャザンの都市遺構

スタラヤ・リャザンは、ロシア最大の都市遺構（ゴロディシチェ）として知られ、ロシア政府によって考古学的保護区および歴史的景観区に指定されています。発掘調査では、クレムリ、生神女就寝大聖堂跡、14世紀の貨幣、白樺文書など貴重な遺物が発見されています。これらの遺構は、かつてのスタラヤ・リャザンの繁栄と悲劇の歴史を物語る、重要な考古学的資料となっています。スタラヤ・リャザンは、中世ロシアの歴史を理解する上で欠かせない存在であり、その遺構は歴史研究において重要な役割を担っています。

もう一度検索