ボリスとグレブ

ボリスとグレブ：キエフ大公国の聖人

ボリスとグレブ（洗礼名：ロマンとダヴィド）は、11世紀初期に没したキエフ大公国の人物であり、同国で最初期のキリスト教聖人として知られています。彼らは、年代記作家ネストルと修道士ヤコブによって11世紀に書かれた二つの『ボリスとグレブ伝』において、キエフ大公ウラジーミル1世の息子であり、大公が最も愛した子供たちとして描かれています。兄弟は、ウラジーミル1世の死後、1015年から1019年にかけて発生した公位継承戦争の中で殺害され、1071年にルーシの正教会によって列聖されました。正教会だけでなく、東方典礼カトリック教会でも崇敬の対象となっています。

生涯

『ルーシ原初年代記』によれば、ボリスとグレブの母親はブルガール人の女性であり、この事実は彼らのトルコ語風の名前にある程度の信憑性を与えています。『ボリスとグレブ伝』では、母親はウラジーミル1世の正妃アンナであり、彼らがウラジーミルの最も年少の息子であるとされています。しかし、現代の研究者の多くは、ボリスとグレブはそれぞれ異なる母親から生まれた子供であり、年齢も離れていたと考えています。殺害された当時、ボリスは既に結婚しており、ロストフ公の地位にありました。ボリスはキエフ大公国の推定公位継承者であった可能性が高いとされています。一方、グレブは未成年であり、東部のムーロム公に封じられていました。

『ルーシ原初年代記』は、スヴャトポルク1世が二人の暗殺を企てたと非難し、「呪われたスヴャトポルク」と呼んでいます。ボリスは従僕と共にテントで寝ている間に刺殺されました。発見された時、ボリスはまだ息があり、袋に入れられてキエフへ運ばれましたが、ヴァリャーグ人によって槍で刺され、息を引き取りました。

『ボリスとグレブ伝』の記録をそのまま鵜呑みにすることはできません。この伝記は優れた聖人伝ではありますが、先行する文学的伝統を多く利用しており、その言い回しやトポスを多く取り入れています。ボリスとグレブの実際の生涯と死の状況は、聖人伝の記述とは大きく異なっていた可能性があります。非ルーシの史料によれば、ボリスはキエフで父ウラジーミル1世の治世を継承しており、『ルーシ原初年代記』が示唆するようにロストフの草原に出没していたわけではありません。

また、ヴァイキングの史料である『エイムンドのサガ』は、ヤロスラフ1世がボリスを殺害するためにヴァリャーグ人を雇ったと伝えています。一部の歴史家は、『ルーシ原初年代記』の記述よりも『エイムンドのサガ』の方が信憑性が高いと考えています。彼らは、スヴャトポルクではなくヤロスラフが政敵を排除することに関心を持ち、そのために兄弟殺害を行ったと主張しています。

崇敬

ボリスとグレブは、正教会とカトリック教会の両方で聖人とされています。正教会では、特に東スラヴの諸教会で崇敬されています。二人は、異教徒である兄の圧迫に対して模範的なキリスト教信仰を保ち、殉教したとされています。1071年にルーシ正教会によって列聖され、翌年3月2日には彼らの遺体がヴィシュゴロド大聖堂に安置されました。この大聖堂は新たに二人の名において成聖され、その後、彼らの名は他の多くの東欧の教会に付けられることになりました。正教会での記憶日は、兄弟共通の記憶日として不朽体移動日の3月2日（3月15日）、またそれぞれが亡くなったとされる日であり、ボリスの記憶日は7月24日（8月6日）、グレブは9月5日（9月18日）です。ただし、どちらの場合も兄弟両方が記憶されることが多いです。

西方におけるコスマスとダミアヌス、スラヴ地域におけるキリルとメフォディのように、ボリスとグレブは共に記憶されることが多く、ロシアには多くの「ボリス・グレブ教会」や「ボリス・グレブ修道院」という名称が見られます。

二人の列聖は東西教会の分裂の時期であり、カトリック教会では長らく彼らの存在は忘れ去られていましたが、1724年にベネディクトゥス13世が二人を列聖しました。

関連項目

新致命者

外部リンク

（ロシア語）Critical examination of Boris and Gleb's story
English-language account of Boris and Gleb's martyrdom
English-language account of Boris and Gleb's martyrdom

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