リュウキュウアサギマダラ

リュウキュウアサギマダラ（琉球浅葱斑、学名：Ideopsis similis）は、タテハチョウ科に分類される美しいチョウです。その名の通り、羽の模様がアサギマダラ（Parantica sita）によく似ていますが、分類学上は異なる属に属しています。

特徴

リュウキュウアサギマダラは、アサギマダラと比較すると全体的にやや小ぶりな体格をしています。外見上の大きな違いとして、アサギマダラでは前翅と後翅で地色（模様以外の基本となる色）がわずかに異なりますが、本種では前翅も後翅も同様の淡い水色をしています。また、翅を彩る黒い模様も、アサギマダラの力強い印象とは異なり、本種のほうがより繊細で細かく複雑に入り組んでいます。これらの特徴から、両種を見分けることができます。

このチョウの最も特徴的な生態の一つに、その毒性があります。幼虫の食草であるキョウチクトウ科（かつてはガガイモ科として分類されていました）の植物には、アルカロイドと呼ばれる毒性物質が含まれており、リュウキュウアサギマダラはそのアルカロイドを体内に蓄積したまま成虫になります。そのため、誤ってこのチョウを捕食した鳥などの天敵は、その強烈な苦味や毒によってひどい目に遭うことになり、以降はリュウキュウアサギマダラを襲わなくなります。この毒性を周囲に知らしめるかのように、彼らはアサギマダラの長距離移動とは異なり、比較的ゆっくりと悠然と飛びます。また、毒を持っているため身を守る必要があまりないことからか、人をあまり恐れず、近くに寄ってくる姿が観察されることもあります。

成虫は主に花の蜜を吸って栄養を摂取します。特に、南西諸島などでよく見られるタチアワユキセンダングサをはじめとする様々な植物の花で、熱心に吸蜜する様子が見られます。

生態・生活史

リュウキュウアサギマダラは、インド亜大陸からスリランカ、ミャンマー、マレーシアを経て、中華人民共和国南部、台湾、そして日本の南西諸島にかけて広く分布しています。アサギマダラが海を越える数百・数千キロメートルにも及ぶ大移動を行うことで知られているのに対し、リュウキュウアサギマダラにはそのような顕著な移動性はありません。そのため、本来の生息域である南西諸島、特に奄美大島より北の地域で偶然に見られる個体は、「迷蝶（めいちょう）」として扱われています。

本種は、冬の間を成虫の姿で越します。寒さが厳しくなると、森林の中などで木の枝などにぶら下がり、しばしば複数の個体が一箇所に集まって静止することで寒さをしのぎます。

幼虫は、ツルモウリンカなどをはじめとする、旧ガガイモ科（現キョウチクトウ科の一部）に分類される特定の植物を食草とします。幼虫はこの植物の葉を食べながら成長し、前述の通り、食草に含まれるアルカロイドを体内に取り込むことで捕食者に対する毒性を獲得します。

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