リュウキュウガネブ

リュウキュウガネブ

リュウキュウガネブは、トカラ列島以南から琉球列島の海岸近くや低山地に自生する野生のブドウです。かつてはエビヅルの変種（Vitis ficifolia var. ganebu）とされていましたが、近年では独立した種として認められないこともあります。しかし、その独特な性質や成分から、育種の観点などで注目されることがあります。

特徴

リュウキュウガネブは、野生のブドウであり、栽培種に比べて果粒が小さく、果肉も少ないのが特徴です。しかし、果実に含まれる機能性成分は栽培種よりも多く、健康に良いと考えられています。容姿はエビヅル（Vitis ficifolia var. lobata）によく似ていますが、全体的に大型です。また、シチトウエビヅル（Vitis ficifolia var. izu-insularis）と同一視されることもありますが、果実などの成分の量や種類に違いが見られます。

葉: 裏面には白い、または淡い茶褐色のクモ毛が生えています。
果実: 有効成分が栽培種よりも種類、量ともに豊富です。ヤマブドウやエビヅルと同様に食用にでき、生食のほか、ワインに加工されることもあります。

分類上の扱い

リュウキュウガネブは、エビヅルによく似た植物として、九州から沖縄の海岸や低山地で見られます。葉が大きく、ほとんど分裂しないものを指して名付けられました。当初はエビヅルの変種 var. ganebu Hatusimaとして記載されましたが、変異が連続的であるため、区別する必要がないとする見解もあります（大橋他編, 2016）。同様にエビヅルの変種として記載されたシチトウエビヅルは、伊豆諸島に産し、リュウキュウガネブにやや似ていますが、大橋他編(2016)では太字で扱われており、一定の意義が認められています。

独立した分類群として扱われることは少なく、一般的な図鑑でもエビヅルの海岸型として判断され、学名が記載されていないこともあります。琉球列島に特化した植物誌では、エビヅルの別名として名前が挙げられているのみで、詳細な記述はありません。Ylistでも和名の別名として扱われる程度です。分類学上の重要性は低いと見なされることもありますが、実際には十分な調査が行われていないことが原因と考えられます。「エビヅルの海岸型」という判断についても、自生地である低山地に分布する個体と海岸に分布する個体の葉に大きな差がないことから、無理があるという指摘もあります。分類は形態の類似性に基づいて行われることが多いですが、リュウキュウガネブは生理・生態的にエビヅルとは異なる点があり、例えば芽が休眠を示さない、自生地で常緑性を示すなどの違いが認められます。

分布

リュウキュウガネブは、八重山諸島、琉球諸島、奄美諸島、トカラ列島に分布しています。

利用

果実はヤマブドウのように生食されるほか、ワインの醸造にも用いられます。また、ヨーロッパブドウのマスカット・オブ・アレキサンドリアなどとの交雑種も作出されています。

脚注

参考文献

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠夫、『日本の野生植物　木本II』、(1989)、平凡社
北村四郎・村田源、『原色日本植物図鑑・木本編 I』、(1971)、保育社
初島住彦 『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会

外部リンク

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