リンカーン・マークVIII

リンカーン・マークVIII：グランドツーリングクーペの終焉

リンカーン・マークVIIIは、1993年から1998年にかけてフォード社がリンカーンブランドで販売していた大型高級クーペです。フォードのウィクソム工場で生産され、リンカーン・マークVIIの後継車として登場しました。フォード・サンダーバードとマーキュリー・クーガーとは姉妹車の関係にありました。

マークVIIIは、そのスタイリッシュなデザインと高性能なエンジンで人気を博しましたが、1998年型を最後に後継モデルが登場せず、リンカーン・マークシリーズの最後のモデルとなりました。

開発の経緯

マークVIIIの開発は1984年に始まり、当初は1990年モデルとして発売される予定でした。デザイン作業は1986年に開始され、当初はインテリアデザインが重視されていました。

1988年秋、フォードは次期モデルのデザインを競合他社と比較し、抜本的なデザインのやり直しを決定しました。デザイナーのキュー・キム氏を中心に、「ストレッチI」と呼ばれる新しいデザインが発表されました。このデザインは、スカラップ形状のサイド、フルレングスのテールライト、スペアタイヤハンプ、ウォーターフォールグリルなどを特徴とし、従来のリンカーン車とは一線を画すものでした。

1988年12月、リンカーンの重役たちは「ストレッチI」の実物大の粘土模型を視察し、そのデザインに驚きつつも、外装のいくつかの変更を指示しました。その結果、クロームを追加し、フロントとリアエンドを修正した「ストレッチII」が誕生しました。

1990年には、フォード・サンダーバードとマーキュリー・クーガーを改造した試作車によるロードテストが開始されました。その後、1991年前半にはフルボディの試作車によるロードテストが開始されました。発売予定は当初の予定から遅れ、1992年12月となりました。

1993年モデルのマークVIIIは、1992年3月に報道機関に発表され、同年11月18日にニューヨークのホテル・マークで正式に発表されました。ウィクソム工場でのマークVIIの生産は1992年4月に終了し、10月のマークVIIIの生産開始に向けて準備が進められました。

モデルの歴史

1993年モデルのマークVIIIは、マークVIIよりも大型化され、室内空間と乗り心地が向上しました。しかし、車台重量はマークVIIよりもわずかに軽量化されました。

マークVIIIには、高強度ルーフ、側面衝撃保護用のドアビーム、前後クラッシャブルゾーン、デュアルフロントサイドエアバッグ、4輪アンチロックディスクブレーキを備えたユニボディ構造が採用されました。また、ショートロングアーム（SLA）4輪独立懸架サスペンションとコンピューター制御エアサスペンションが標準装備され、高速走行時の空力性能が向上しました。

エンジンには、新開発のオールアルミ製4.6LDOHC32バルブV8エンジンが搭載され、フォード・モデュラーエンジンの初搭載車となりました。このエンジンは、最高出力280ps、最大トルク386N・mを発生しました。トランスミッションには、4速オートマチックトランスミッションが採用されました。

マークVIIIには、スピードメーター、電子メッセージセンター、オートマチッククライメートコントロール、クルーズコントロール、本革シートなどの豪華な装備が標準で搭載されました。オプションとして、パワームーンルーフ、エレクトロクロミック自動調光ミラー、AM/FMステレオCDプレーヤーなどが用意されました。

1995年モデルでは、インストルメントパネルとラジオのデザインが変更され、LSC（ラグジュアリー・スポーツ・クーペ）モデルが追加されました。LSCモデルは、エンジンがチューンアップされ、最高出力290ps、最大トルク400N・mを発生しました。また、LSCモデルは、独特なボディカラー、リアデクリッドバッジ、穴あきレザーシートなどを特徴としていました。

1996年モデルには、リンカーンの75周年を記念したダイヤモンドアニバーサリーパッケージが設定され、本革シート、音声起動式携帯電話、JBLオーディオシステムなどが装備されました。

フェイスリフト（1997-1998）

1997年モデルでは、マークVIIIは大幅なフェイスリフトを受けました。フロントとリアのフェイシアがより滑らかで丸みを帯びたデザインになり、グリルが大型化されました。ボンネットはアルミニウム製に変更され、トランクにはスペアタイヤの形がかすかに付けられました。HIDヘッドランプが標準となり、リアデッキリッドにはネオンブレーキライトが配置されました。

サイドミラーには足元灯が装備され、LEDターンシグナルランプが内蔵されました。インテリアには「シアターライト」が採用されました。エンジンは、ディストリビューターレスのコイルオンプラグ点火システムが採用されました。

LSCモデルでは、ショックアブソーバーが強化され、スタビライザーバーが太くなり、ハンドリング性能が向上しました。全速トラクションコントロールが標準装備となり、必要に応じて解除できるようになりました。

マークVIIIの生産終了に向けて、リンカーンはスプリング・フィーチャーとコレクターズ・エディションという2つの特別モデルを提供しました。マークVIIIの生産は1998年型で終了し、最後の1台は1998年6月9日に工場から出荷されました。

マークVIIIの後継モデルとしては、2000年モデルとして発表された4ドアミッドサイズのリンカーン・LSがその役割を担うことになりました。

マークVIIIの総生産台数は、約12.6万台でした。

脚注

リンカーン
リンカーン・LS

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