リンカーン聖書

リンカーン聖書とは

リンカーン聖書（The Lincoln Bible）は、アメリカ合衆国の第16代大統領エイブラハム・リンカーンが1861年に就任式で使用した聖書です。この聖書はオックスフォード大学出版局が発行した欽定訳で、1853年に出版されたものです。610ページにわたるこの聖書は、縦6インチ（約150ミリメートル）、横4インチ（約100ミリメートル）、厚さ1.75インチ（約44ミリメートル）というサイズで、バーガンディーのベルベット製の表紙に金色の縁取りが施されています。裏表紙には1861年の就任式の記録とともに、合衆国最高裁判所の印が添えられています。

歴史的背景

1861年、リンカーンが大統領就任式を行うためにワシントンD.C.に到着した際、彼自身の持ち物が配送中であり聖書もその一つでした。そこで、合衆国最高裁判所書記官ウィリアム・トーマス・キャロルが所有していた聖書が、宣誓式での使用を許可されました。この聖書が後に「リンカーン聖書」として知られるようになりました。宣誓式後、リンカーンはこの聖書をキャロルに返却しましたが、リンカーンの暗殺後にキャロルからリンカーン家へと譲渡されました。

その後、1928年にリンカーンの長男ロバートの未亡人メアリーがアメリカ議会図書館に寄贈しました。その際、聖書には申命記の第31章とホセア書の第4章に印が付けられていました。

他の大統領による使用

リンカーン聖書はその後もアメリカの大統領に使用されました。バラク・オバマは、2009年および2013年の就任式でこの聖書を使用しました。特に、2009年の式ではリンカーン生誕200年を祝して、2月から5月までアメリカ議会図書館で展示されました。また、2016年にはカーラ・ヘイデンが議会図書館館長としての宣誓の際にもこの聖書が用いられました。

さらに、ドナルド・トランプは2017年の就任式において、自身が幼少期に使用していた聖書の上にリンカーン聖書を重ね、その上に手を置いて宣誓しました。このように、リンカーン聖書は多くの歴史的場面で重要な役割を果たしてきました。

現在の評価

リンカーン聖書自体は希少価値があるわけではなく、同種の聖書は通常30ドルから40ドル程度の市場価格です。しかし、「リンカーンが使用した聖書」という歴史的意義から、この聖書は特別な価値が認められています。

結論

リンカーン聖書は、アメリカ合衆国の歴史において重要な象徴であり、宗教的信念と国家の合意が交差する場所としての意味合いを持つ文化的遺産となっています。リンカーンの使った聖書としての姿は、後の大統領たちにも継承されることになりました。

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