リング符号

リング符号（ring）とは、文字の上下に付される小さな円形の記号で、発音を区別するために用いられるダイアクリティカルマークの一種です。この記号は、単独で使われるだけでなく、他の文字と組み合わさることで、特定の音や意味を表す役割を果たします。

よく似た記号との区別

リング符号とよく似た記号として、以下のものがあります。これらの記号は、形状が似ているため混同しやすいですが、それぞれ異なる意味や用途を持っています。

° (U+00B0)： 単位記号で、「度」を表します。温度や角度を表す際に使用されます。
º (U+00BA)： 序数標識で、順序を示すために使用されます。例えば、「1º」は「第1」という意味になります。
Å (U+212B)： 単位記号で、「オングストローム」を表します。Åについては、詳細を別の記事で参照してください。

各言語における用法

リング符号は、特定の言語において特定の音を表すために使用されます。以下は、その代表的な例です。

デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語、ワロン語： これらの言語では、「å」が用いられ、円唇奥舌半広母音の /ɔ/ の音を表します。
チャモロ語：「å」が用いられ、奥よりの /ɑ/ の音を表します。
チェコ語： クロウジェク（kroužek）と呼ばれるリング符号が付いた「ů」が用いられます。これは、/uː/ の発音を表し、同じ発音の「ú」とは異なり、歴史的に二重母音「uo」に由来する語に用いられます。

音声記号としての用法

国際音声記号（IPA）では、リング符号は文字の下に置かれることで、無声を表す記号として用いられます。例えば、/ɡ̊/ は無声の/g/の音を表します。ディセンダのある文字（下に長く伸びる部分を持つ文字）の場合は、リング符号を上に書いてもよいとされています。

その他の用法

リング符号は、言語以外にも様々な分野で用いられます。

サンスクリットの翻字： IAST方式では、音節を形成する「r, l」を「ṛ, ṝ, ḷ, ḹ」のようにドット符号で表しますが、ドットの代わりにリング符号を用いた「r̥, r̥̄, l̥, l̥̄」という表記が用いられることもあります。ISO 15919方式もこの方法を採用しており、「ṛ, ḷ」はそり舌の/ɽ/, /ɭ/を表すために用いられます。
インド・ヨーロッパ祖語：音節を形成する子音は、下つきのリング符号を用いて「m̥, n̥, l̥, r̥」のように表されます。これは、国際音声記号の「m̩, n̩, l̩, r̩」に相当します。

符号位置

リング符号は、Unicodeで以下の位置に定義されています。

結合用上付きリング: U+030A
結合用下付きリング: U+0325
独立したリング符号: U+02DA

関連項目

ダイアクリティカルマーク： 発音区別符号全般に関する記事を参照してください。

このように、リング符号は様々な言語や分野で活用される、多様な役割を持つ記号です。その使用は、単に文字に装飾を加えるだけでなく、発音や意味の区別において重要な意味を持っています。

もう一度検索