リンドス

ロドス島のリンドス：地中海に輝く歴史の宝

エーゲ海の真珠、ドデカネス諸島に位置するロドス島。その東海岸に、歴史と自然美が融合した魅力的な町、リンドスがあります。ロドス島都心から南へ約55km、紺碧の海と白い建物が織りなす美しい海岸線は、多くの観光客を惹きつけます。

しかし、リンドスの魅力は美しい海岸線だけではありません。小高い丘の上にそびえるアクロポリスは、古代から現代まで、幾多の歴史的出来事の舞台となってきた重要な場所です。天然の要塞として、古代ギリシア、ローマ帝国、東ローマ帝国、聖ヨハネ騎士団、そしてオスマン帝国といった様々な勢力がこの地を支配し、利用してきました。そのため、アクロポリスの発掘調査と考古学的解釈は、複雑さを増しており、現在も研究が続けられています。アクロポリスの頂上からは、広大な地中海、港、そしてリンドスの町並みを一望できる絶景が広がります。

悠久の歴史：紀元前からの繁栄と変遷

リンドスの歴史は古く、紀元前10世紀頃、トレーポレモス率いるドーリア人がこの地に都市を建設したと伝えられています。ロドス島東岸の戦略的な位置から、紀元前8世紀頃にはギリシア人とフェニキア人の交易拠点として栄え、活気に満ちた都市へと発展しました。その後、紀元前5世紀末にはロドス島の中心都市がロドス市に移り、リンドスの重要性は相対的に低下していったものの、独自の文化と歴史を育み続けました。

古代リンドスの象徴ともいえるのが、アテーナー・リンディア神殿です。紀元前5世紀から建設が始まり、紀元前3世紀頃には壮大な規模を誇る神殿へと完成しました。ヘレニズム時代、ローマ帝国時代と、時代を経るごとに神殿は拡張と改修を繰り返し、リンドスの宗教的、政治的中心として重要な役割を担いました。中世初期には神殿は廃墟と化しますが、14世紀には聖ヨハネ騎士団がその上に要塞を築き、オスマン帝国との抗争に備えました。

アクロポリス：古代の息吹を今に伝える遺跡群

リンドスのアクロポリスには、紀元前からの様々な建造物の遺構が残されています。今もなおその一部を見ることができる主要な遺跡には以下のようなものがあります。

アテーナー・リンディア神殿: ドーリス式神殿の壮麗な遺跡。神殿内部には、アテーナー像と供物台があったと推測されています。
プロピュライア: 紀元前4世紀に建設された神聖な領域への入口。大きな階段と、D字形の柱廊、5つの戸口を持つ壁が特徴です。
ヘレニズム期の柱廊: 全長87メートル、42本の柱が並ぶ壮大な柱廊。紀元前2世紀頃に建設されました。
三段櫂船のレリーフ: アクロポリスへの階段脇の岩壁に刻まれた、ロドス式の軍艦の精緻なレリーフ。将軍Hagesanderの像も彫られています。
ローマ神殿: ディオクレティアヌス帝を祀ったと推測されるローマ時代の神殿遺跡。
アクロポリスの城壁: ヘレニズム期に築かれた城壁とその一部であるプロピュライアや階段。ローマ時代の碑文から、2世紀に修復されたことが分かっています。
聖ヨハネ騎士団の城: 1317年以前に、東ローマ帝国時代の要塞の基礎の上に建設されました。天然の断崖を利用した堅固な城壁と塔が特徴です。
正教会の教会: 13～14世紀頃に、それ以前の教会の廃墟の上に建てられました。

これらの遺跡群は、リンドスの歴史の深さと、様々な文明が交錯した複雑さを物語っています。映画『ナヴァロンの要塞』の一部もここで撮影されたことから、その独特の風景は世界中の人々を魅了しています。

発掘と保存：歴史の継承への取り組み

リンドスの発掘調査は、1900年から1914年にかけてデンマークの研究者によって行われ、アクロポリスの岩盤まで発掘されました。その後、イタリアの支配下にあった時代には復元作業が行われましたが、現代の考古学の基準からは不十分なものでした。近年では、ギリシャ文化省の監督の下、国際的な考古学チームが正確な発掘と保存に努めており、この歴史的遺産の保護と継承に向けた取り組みが続けられています。


リンドスは、単なる観光地としてだけでなく、地中海文明の歴史を学ぶ上で貴重な場所です。その美しい景観と豊かな歴史は、訪れる人々に忘れられない感動を与えてくれることでしょう。

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