リンパ

リンパ（淋巴、英語: lymph）は、体内に存在する主要な体液の一つです。毛細血管から組織に染み出した血漿成分を主体とする液体で、一般には黄色く、弱アルカリ性の漿液として知られています。リンパ液とも呼ばれます。

広義には、細胞間を満たす「細胞間質液（間質リンパ）」と、リンパ管内を流れる「管内リンパ液」を含みますが、狭義にはリンパ管内の液体のみを指す場合があります。細胞間質液と管内リンパ液は基本的には同じものですが、成分濃度に違いが見られます。血漿は多量のタンパク質を含み、血管内と血管外（細胞間質）には約28mmHg対約8mmHgという膠質浸透圧の差があります。この圧差により、細胞間質液中の水分、電解質、ガス成分の多くは血管（特に静脈）に再吸収されます。

しかし、血管に戻りきれない大きな分子であるタンパク質や、ウイルスなどの異物は、主に周囲の筋肉の動きなどに助けられてリンパ管に吸収され、管内リンパ液となります。リンパ液の生成は、毛細血管の透過性が亢進することによっても促進されます。リンパ管に集まったリンパ液は、リンパ管網を経てより太い管へと流れていきます。

リンパ液の細胞成分は主にリンパ球ですが、リンパ管の末梢部では少なく、リンパ節を経るにつれて増加します。リンパ組織から全身へのリンパ球の輸送にも関与します。リンパ管の下流域で出血があれば、リンパ液中に赤血球が含まれることもあります（血液吸収）。消化管から吸収された脂肪はリンパ管で運ばれるため、消化管由来のリンパ液は脂肪球が多く乳白色を呈し、「乳糜（にゅうび）」と呼ばれます。

リンパ液にはプロトロンビンなどの凝固因子が含まれており、体内から出ると凝固しますが、血小板が少ないため血液より凝固性は低いです。

リンパ節内でのリンパ液の流れは特徴的で、輸入リンパ管から入ったリンパ液は、辺縁洞、中間洞、髄洞を通過し、濾過や免疫細胞との接触を経て輸出リンパ管から出ていきます。

全身のリンパ液は、最終的に主要な二つのリンパ本幹に集められます。右上半身のリンパを集める「右リンパ本幹」（1〜3cm）は、内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部である右静脈角で静脈に注ぎます。左上半身と下半身のリンパを集める全長約35〜40cmの「胸管」は、左右の腸リンパ本幹と腰リンパ本幹が合流してできる乳糜槽（にゅうびそう）（第二腰椎前方）から始まり、胸部を上行して最終的に左静脈角で静脈に合流します。

リンパ液の運搬や生成に関わるリンパ管、リンパ節、その他のリンパ組織（脾臓、胸腺など）を総称して「リンパ系」と呼びます。リンパ系は、体液循環の維持、老廃物や異物の除去、免疫機能の維持において重要な役割を果たしています。

傷口からわずかに滲み出すこともあります。この液はリンパ液であることが多く、触ると若干べたつきがあり、微かに鉄のような臭いがすることがあります。

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