リール・ミュージック

ビートルズ映画音楽集『Reel Music』：未CD化のレア音源と魅力的なアートワーク

1982年、ビートルズの映画音楽を集めたコンピレーションアルバム『リール・ミュージック』(Reel Music)がアナログLPでリリースされました。このアルバムは、アメリカでのビートルズ主演映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』の再上映を記念して企画されたもので、映画やテレビ番組で使用された楽曲が選りすぐられて収録されています。

当時としては珍しかったステレオミックスを採用している点が大きな特徴です。特に「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のステレオミックスは、アメリカでは本作で初めて発売されました。従来のアメリカ盤では、イントロがモノラルミックスと同様の編集が施されたステレオミックスが使用されていましたが、本作ではイギリス盤と同等のミックスが収録されています。また、「ア・ハード・デイズ・ナイト」と「涙の乗車券」も、従来のアメリカ盤では擬似ステレオミックスでしたが、本作ではリアルなステレオミックスが初収録されました。さらに、「恋する二人」では、イントロのハーモニカ演奏のミスを修正した、他の作品にはない独自のミックスが採用されています。

アルバムには、映画フィルムを模したメンバー写真が印刷されたインナースリーブと、「Souvenir Program」と題された、5本の映画の解説と写真を掲載したパンフレットが付属しており、コレクターアイテムとしても高い価値を持っています。1980年12月8日のジョン・レノンの死去後、初めてリリースされたビートルズのアルバムという点も、歴史的価値を高める要因となっています。

商業的にも成功を収め、アメリカBillboard 200で3週連続最高位19位を獲得、50万枚以上のセールスを記録し、アメリカレコード協会からゴールド認定を受けています。アメリカとカナダでは、関係者向けのプロモーション用ゴールドカラー盤も存在したとされています。

興味深いのは、本作から派生したシングル『ザ・ビートルズ・ムービー・メドレー』の存在です。このシングルは、「マジカル・ミステリー・ツアー」、「愛こそはすべて」、「悲しみはぶっとばせ」、「恋する二人」、「ア・ハード・デイズ・ナイト」、「涙の乗車券」、「ゲット・バック」の7曲をメドレー形式で収録。アルバムと同じアートワークを使用し、B面にはアルバム未収録の「すてきなダンス」が収録されました。1982年3月22日にアメリカ、5月24日にイギリスで発売されました。

しかし、現在に至るまで『リール・ミュージック』はCD化されていません。アナログLPでしか聴くことのできない、貴重なビートルズのサウンドと、充実したアートワークが魅力の、まさにコレクターズアイテムと言えるでしょう。未発表ミックスやレアなステレオミックス、そして今では入手困難なアナログ盤という希少性も相まって、ビートルズファンにとって、本作は特別な存在感を持ち続けています。アルバムは、ジョン・レノン死後最初に発売されたビートルズのアルバムという、歴史的な意義も併せ持っています。アナログLPならではの温かみのあるサウンドと、豪華なパッケージングを体感できる、まさに時代を超えた名盤と言えるでしょう。

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