ルイサイト

ルイサイト (Lewisite) の概要

ルイサイトは、高い毒性を持つ有機ヒ素化合物であり、化学兵器として使用されることがあります。この物質は、アダムサイトなどの類似物質と同様に、びらん剤として分類されており、特に戦場においてその危険性が顕著です。ルイサイトは即効性があるため、遅効性のマスタードガスと混ぜて用いられることが多く、しばしば「マスタード-ルイサイト」という名称で知られています。

特徴と作用

ルイサイトの特に注目すべき特性は、繊維やゴムを透過する能力です。このため、従来の防護服では完全に防ぐことができず、対策が難しいとされています。ルイサイトは、ヒ素化合物に共通する作用機序を持ち、特にピルビン酸デヒドロゲナーゼ系酵素を阻害することによってその影響を及ぼします。

健康への影響

ルイサイトに直接触れると、筆者はすぐに皮膚や気道に痛みと刺激を感じることになります。皮膚接触の場合、30分以内に発赤が現れ、約12時間後には水疱が形成されることがあります。また、呼吸器系に吸入されると、胸の焼けるような痛み、くしゃみ、せき、嘔吐などの症状が引き起こされ、場合によっては肺浮腫を生じて死に至ることもあります。

さらに、ルイサイトは細血管の透過性を高める作用があり、これが原因で血液中の体液量が減少し、ショックや臓器の鬱血が生じることが報告されています。このような状況では、消化器系症状を伴いながら肝臓や腎臓の壊死が確認されています。

目への影響

ルイサイトが眼に触れると、非常に激しい痛みを伴い、適切に洗浄しない限り視力を失う危険があります。急激な視覚障害にもつながりかねず、注意が必要です。

歴史と発見

この物質はアメリカの化学者ウィンフォード・リー・ルイス（1878年–1943年）にちなんで名付けられました。彼は1918年に、ルイサイトの合成法を提案したJulius Arthur Nieuwlandによる論文を発見しました。その後、1920年代にアメリカ軍によって実験的な使用が行われました。

解毒剤

ルイサイトに対する有効な解毒剤としては、ジメルカプロール（BAL）が知られています。この薬剤は、ルイサイトによる毒性の影響を軽減するために用いられます。

毒性

ルイサイトの毒性は非常に高く、以下のような耐久力の指標（LCt50）があります。

• - 吸入時: 1,400 mg・min/m³
• - 皮膚接触時: 100,000 mg・min/m³
• - 皮膚における致死量（ICt50）: 1,500 mg・min/m³以上

関連事項

ルイサイトに関する興味深いエピソードとして、1948年にフロリダ沖で行われたオペレーション・ゼラニウムがあります。この作戦では、3,000トン以上のルイサイトが海に投棄されました。この名前は、ルイサイトの香りがゼラニウムの花の匂いに似ていることに由来しています。

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