ルイス・B・プラー級遠征海上基地

ルイス・B・プラー級遠征海上基地

ルイス・B・プラー級遠征海上基地（英語: Lewis B. Puller-class Expeditionary Mobile Base）は、アメリカ海軍が運用する遠征海上基地（Expeditionary Mobile Base, ESB）の艦級です。この艦級は、従来の海上事前集積船（MPS）や遠征移送ドック（ESD）といった概念から発展し、より多機能かつ自律的な前方展開能力を持つプラットフォームとして設計されました。

概要と前級からの進化

本級は、先行するモントフォード・ポイント級遠征移送ドック（ESD-1級）をベースに開発されましたが、その設計思想にはいくつかの重要な変更点が加えられています。最大の特徴は、ESD級にはなかった広大なヘリコプター甲板と強化された指揮通信施設が新たに設置されたことです。これにより、単なる物資や装備の移送拠点としてだけでなく、作戦海域における「前進基地」としての機能が付与されました。ヘリコプター甲板は、CH-53のような大型ヘリコプターの運用に十分な広さを持ち、船首部には2機のCH-53ヘリコプターを収容できる格納庫も備えています。これは、人員や物資の迅速な空輸、偵察活動、あるいは特殊作戦支援などを洋上で行う能力を飛躍的に向上させました。

また、長期の洋上展開を可能にするための居住施設も拡充されています。これにより、単に一時的な拠点としてではなく、数十名あるいは数百名の乗員や派遣部隊が長期間にわたり居住し、作戦を継続できる環境が提供されています。

搭載能力にも変更が見られます。モントフォード・ポイント級がホバークラフト型揚陸艇（LCAC）の搭載・運用能力を持っていたのに対し、ルイス・B・プラー級ではLCACの搭載能力は見送られました。その代わりに、より小型で汎用性の高い複合艇（Rigid Inflatable Boat, RIB）や、沿岸域の機雷掃海に用いられるMk.105磁気掃海具などの搭載が可能となっています。これは、本級がLCACによる大型装備の揚陸よりも、ヘリコプターや複合艇を用いた人員・軽物資の迅速な輸送、あるいは特殊な作戦支援に重点を置いていることを示唆しています。

艦艇の状況

ルイス・B・プラー級は、合計5隻の建造が計画されています。建造は主にNASSCO社によって行われています。現在までに、計画された5隻のうち3隻がすでにアメリカ海軍に就役しており、実際に運用されています。残りの2隻は現在建造が進められており、将来的に全5隻体制となる予定です。これらの艦艇は、世界中の紛争地帯や不安定地域において、港湾施設が不十分な場合でも柔軟な作戦展開を可能にする、アメリカ海軍の遠征作戦において極めて重要な役割を担っています。

まとめ

ルイス・B・プラー級遠征海上基地は、前級の経験を活かしつつ、ヘリコプター運用能力や指揮通信能力を大幅に強化することで、真の意味での「洋上前進基地」としての機能を獲得した画期的な艦級です。これにより、アメリカ海軍は、地理的な制約に縛られることなく、より迅速かつ効果的に部隊を展開・支援する能力を高めました。計画されている全5隻が就役することで、その能力はさらに増強されることでしょう。本級は、現代の多様な脅威に対応するための、アメリカ海軍の柔軟かつ強力な遠征能力を象徴する存在と言えます。

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