ルイ・オベール

ルイ・オベールについて

ルイ・オベール（Louis Aubert）は、1877年2月19日にフランスのブルターニュ地方にあるパラメで生を受け、1968年1月9日にパリで静かにその生涯を終えた、フランスの重要な作曲家です。

生涯の歩み

裕福な船主の家庭に生まれたオベールは、幼い頃からその音楽的才能、特に透き通るようなソプラノの声に両親が気づき、本格的な音楽教育を受けさせるためにパリへと送り出されました。少年期には、マドレーヌ教会で初演されたガブリエル・フォーレの傑作『レクイエム』において、「ピエ・イエズ」のパートをボーイソプラノとして歌い、早くからその声楽家としての将来を嘱望されました。

その後、パリ音楽院に進学した彼は、作曲のクラスで尊敬を集める巨匠、ガブリエル・フォーレに師事しました。フォーレ門下で、オベールは作曲家としての基礎をしっかりと築き上げました。

ピアニストとしての才能と作曲活動

オベールは単に作曲家としてだけでなく、優れたピアニストとしてもその実力を発揮しました。その卓越した演奏技術は同時代の作曲家たちからも高く評価されており、特にモーリス・ラヴェルは、自身の洗練されたピアノ作品集『高雅で感傷的なワルツ』の初演を、信頼するピアニストであるオベールに託しています。これは、オベールがいかに優れた演奏家であったかを示すエピソードです。

作曲家としてのオベールは、幅広いジャンルにわたる作品を残しました。特に声楽曲には力を入れましたが、最も初期の重要な成果として挙げられるのが、シャルル・ペローの有名なおとぎ話を題材にしたメルヘン・オペラ『青い森』（La forêt bleue）です。この作品は1904年に作曲され、国外では1911年にボストンで初演されて成功を収めました。さらに母国フランスでも、1924年にパリのオペラ＝コミック座で上演されるなど、国内外で評価を得ました。

クラシック音楽の枠にとどまらず、オベールはポピュラー音楽の分野にも関心を示しました。特に当時の著名な歌手であったマリー・デュバのために、多くの魅力的なシャンソンを作曲しています。これにより、彼の音楽はより幅広い層に届けられました。

自身の出身地であるブルターニュ地方に対しては、意外なほど音楽的な霊感を受けることが少なかったとされています。むしろ、後に移り住んだバスク地方の文化や風景の方が、彼の作品に影響を与えた可能性が指摘されています。

晩年

多才な音楽家として活動を続けたルイ・オベールでしたが、1968年、パリで人知れず静かにその生涯を閉じました。

彼の作品は、師であるフォーレや同時代のラヴェルらとの関連性も持ちながら、独自の抒情性と洗練された筆致によって特徴づけられます。作曲家、そしてピアニストとして、フランス音楽史の一角を占める存在と言えるでしょう。

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