ルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス

ルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス：初期キリスト教の雄弁家とコンスタンティヌス1世の顧問

ルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス（240年頃 - 320年頃）は、初期キリスト教において重要な役割を果たした著述家です。北アフリカ出身とされ、修辞学の教師としてキャリアをスタートさせました。ローマ帝国東部各地で教鞭をとり、やがてコンスタンティノープルにたどり着きます。

ラクタンティウスは、洗練されたラテン語で書かれたキリスト教弁証を著し、当時の教養ある異教徒にも受け入れられるような作品を生み出しました。それは単にキリスト教を擁護するだけでなく、ギリシア哲学からの批判にも答えるものでした。彼の代表作『神聖教理』（Divinae Institutiones）は、キリスト教思想を体系的にまとめた初期の試みとして高く評価されています。

彼の死後、幾分異端的な見解もあったとされますが、ルネサンス期の人文主義者たちは、神学的な内容よりもむしろ、その優雅で洗練されたラテン語の文体に注目しました。ある英訳者は、ラクタンティウスの高い評価は、著作の内容だけでなく、その学識、表現の豊かさ、文体の美しさにあると述べています。

ラクタンティウスはキリスト教徒の家庭で生まれたわけではありませんでした。若き日にヌミディアで修辞学を教え、その後、ディオクレティアヌス帝の治世下、ニコメディアで公的な修辞学教師を務めました。この時の経験は、詩『ホドエポリクム』に詠われています。ニコメディアでは、宮廷で論客や異教の哲学者たちと交流し、コンスタンティヌス1世やガレリウスと出会いました。

ディオクレティアヌス帝によるキリスト教迫害が始まると、ラクタンティウスは職を辞し、貧しい生活を送ることになります。しかし、コンスタンティヌス1世が皇帝になると、彼の庇護を受け、生活は安定しました。さらに、コンスタンティヌスの息子クリスプスの家庭教師となり、クリスプスが副帝に任じられてトリーアへ赴任すると、彼に同行しました。クリスプスが処刑された後、ラクタンティウスの最期については不明です。

ラクタンティウスは、古典古代の文体を踏襲した初期のキリスト教著述家の一人であり、「キリスト教徒のキケロ」と呼ばれることもありました。彼の著作は15世紀に何度も出版され、大きな人気を博しました。

ラクタンティウスの主要著作

彼の著作は、洗練されたラテン語と弁証的な手法によって特徴付けられています。主な作品は以下の通りです。

『神の業』（De Opificio Dei）: 弁証的な作品で、ディオクレティアヌス帝による迫害中に書かれました。神の創造業を論じ、ラクタンティウスの弁証的な思考様式を示しています。
『神聖教理』（Divinarum Institutionum Libri VII）: ラクタンティウスの代表作であり、キリスト教神学を体系的に論じた初期の試みです。異教徒への反論とキリスト教の真理の確立を目的としています。その文体の美しさは高く評価される一方で、聖書への知識不足を指摘する声もあります。
『神の怒り』（De Ira Dei）: ストア派やエピクロス派の哲学に批判的に対峙し、神の怒りについて論じています。
『迫害者達の死』（De Mortibus Persecutorum）: キリスト教の迫害者たちの死を描き、歴史書としても扱われています。コンスタンティヌス1世が改宗前に見たというキー・ロー（☧）の幻視についても記されています。
* 『不死鳥』（De Ave Phoenice）: ラクタンティウスに帰属されている詩で、不死鳥の神話を取り上げています。

ラクタンティウスは、その優れた文才と弁証術によって、初期キリスト教の普及に貢献しました。彼の著作は、後のキリスト教思想や人文主義にも影響を与え続け、現在でも研究対象となっています。 彼の生涯と著作は、初期キリスト教の知的な発展と、キリスト教とローマ帝国の関係を理解する上で、重要な手がかりとなります。 さらに、彼の作品は、古代ローマの修辞学とキリスト教神学の融合という点でも注目に値します。

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