ルドルフ〜ザ・ラスト・キス〜

ミュージカル『ルドルフ～ザ・ラスト・キス～』：ハプスブルク家の皇太子と禁断の恋

1889年、オーストリア皇太子ルドルフは、愛人マリー・ヴェッツェラと共に、マイヤーリンクにて心中しました。この歴史的悲劇を題材としたミュージカル『ルドルフ～ザ・ラスト・キス～』（原題：Rudolf）は、フレデリック・モートンの小説「A Nervous Splendor」を原作とし、作曲をフランク・ワイルドホーン、脚本をジャック・マーフィー、作詞をジャック・マーフィーとナン・ナイトンが担当した作品です。

オーストリア・ウィーンで制作された本作は、2006年5月にハンガリーで初演され、その後、世界各国で上演されています。日本においては、2008年と2012年に、異なる演出・構成で帝国劇場にて上演され、大きな話題を呼びました。2008年公演は宮本亜門が演出を担当し、日本の観客にルドルフの悲劇を鮮やかに伝えました。一方、2012年公演は、イギリス人劇場監督デヴィッド・ルヴォーが演出を担当し、ウィーン版を踏襲した、より本格的な演出がなされました。ウィーンより舞台装置を空輸するなど、2008年版とは大きく異なる内容となっています。韓国においても、『皇太子ルドルフ』として2012年、2014年に、そして『ザ・ラスト・キス』として2017年から2018年まで上演されています。

物語の舞台：ハプスブルク家の影と光

物語は、厳格な父であるフランツ・ヨーゼフ帝との確執、そして冷え切った妻シュテファニーとの関係に苦悩するルドルフの姿から始まります。彼は、自由と平等を強く願う青年でした。宮廷舞踏会で出会ったマリーとの禁断の恋は、ルドルフに人生の希望と光をもたらしますが、同時に大きな危険と葛藤を招きます。

ルドルフは、ハンガリーの独立運動家とも繋がりを持ち、政治的理想と皇太子としての立場の間で揺れ動きます。彼の悩みは、マリーとの関係を知った首相ターフェによってさらに複雑化していきます。ルドルフの苦悩は、単なる恋愛問題にとどまらず、当時のオーストリア帝国の政治的混沌と深く結びついているのです。物語は、ルドルフとマリー、そして彼を取り巻く人々の複雑な人間関係、愛、裏切り、そして悲劇的な運命を、鮮やかに描き出しています。

登場人物：それぞれの思惑と運命

ルドルフを取り巻く人々も、それぞれ複雑な思惑と運命を背負っています。マリーの友人であるラリッシュ伯爵夫人、ルドルフの親族であり、様々な立場からルドルフに関わった人物、手品師ヨハン・ファイファー、そしてルドルフの親しい友人である英国皇太子エドワードなど、多様な登場人物が、物語に深みを与えています。それぞれのキャラクターの背景や心情が丁寧に描かれ、観客はルドルフの悲劇をより深く理解することになるでしょう。

音楽と演出：豪華絢爛な舞台と心に響く旋律

フランク・ワイルドホーンによる音楽は、ドラマチックな展開と、登場人物たちの心情を巧みに表現しています。豪華な舞台装置と衣装も魅力の一つで、当時のオーストリア帝国の華やかさと、ルドルフの苦悩が対比的に描かれています。宮本亜門演出による日本公演では、日本の観客の感性に合わせた演出が施され、高い評価を得ました。ウィーン版を踏襲した2012年公演では、より本格的な演出と、ウィーンから空輸された舞台装置によって、オリジナルに忠実な作品が届けられました。

普遍的なテーマ：自由への憧れと個人の葛藤

『ルドルフ～ザ・ラスト・キス～』は、単なる歴史劇ではありません。自由と平等への憧れ、そして個人の葛藤、権力と個人の対立など、現代社会においても普遍的なテーマを内包しています。ルドルフの悲劇を通して、私たちは自身の生き方や社会との関わり方について、改めて考えさせられるでしょう。

ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜