ルノー・25

ルノー25：フランスが誇る高級ハッチバック

1983年、ルノーは最高級車種たるルノー25を発表しました。既存の20、30シリーズの後継として登場したこのモデルは、フランス語で「ヴァンサンク」と呼ばれる5ドアハッチバックです。その魅力は、贅を尽くした内装と、当時としては驚異的な空力性能にありました。

最高峰の快適性と洗練されたデザイン

ルノー25は、単なる高級車ではありませんでした。本革シートや専用スーツケースを備えた「バカラ」という特別仕様も存在し、まさにフランスの最高級車としての地位を確立していました。デザインにおいても、極限まで空気抵抗を低減したフラッシュサーフェイスボディを採用。Cd値0.28という数値は、同時代のライバルであるアウディ100をも凌駕する優れたものでした。

後席の広さを重視したリムジンモデルも用意され、そのゆったりとした空間と電動リクライニングシートは、当時のフランス大統領、フランソワ・ミッテラン氏にも愛用されたほどです。また、駐日フランス大使公用車としても採用されており、その高い信頼性とステータス性を物語っています。

多様なパワートレインと洗練された走り

ルノー25は、縦置きFFレイアウトを採用。エンジン、デフ、トランスミッションが一直線に配置され、優れたバランスを実現していました。エンジンラインナップは、ルノー、プジョー、ボルボによる共同開発のPRV V型6気筒エンジンをはじめ、直列4気筒エンジン、ディーゼルエンジンなど、多様な選択肢を提供していました。

中でも、V型6気筒エンジンは、滑らかで力強い走りを提供。最高速度200km/hを超えるモデルも存在し、当時の高級車として申し分のないパフォーマンスを誇っていました。1988年のマイナーチェンジ（フェーズII）では、V6エンジンが排気量アップされ、さらに洗練された走りを実現しました。

独自のデザインと伝統

ルノー25のボディサイズは、全長4,650mm、全幅1,770mm、全高1,405mmと、このクラスでは標準的なサイズでしたが、5ドアハッチバックというボディスタイルは、この車格では珍しいものでした。これは、ルノー16、20、30と続くルノーの伝統であり、後継モデルであるサフランやヴェルサティスにも受け継がれています。

インテリアデザインは、マルチェロ・ガンディーニによるもの。独特のダッシュボードデザインは、当時としては斬新で、ルノー25の個性的な魅力を際立たせていました。

日本市場とグローバル展開

日本では、ジヤクス・カーセールスが輸入販売を担当。V型6気筒モデルや直列4気筒モデル、そして最高級のバカラモデルも導入されました。アメリカ市場では、クライスラーとの提携の下、イーグル・プレミアやダッジ・モナコとして販売され、北米市場でもその存在感を示しました。

まとめ

ルノー25は、優れたデザイン、快適な室内空間、パワフルなエンジン、そして洗練された走りによって、当時のフランスの技術力を象徴する存在でした。大統領専用車としての採用や、世界市場での展開は、その高い評価を証明しています。生産終了から時が経っても、ルノー25は、自動車史に残る名車として記憶されています。

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