ルビー・プリンセス

ルビー・プリンセス号：新型コロナウイルス感染症の大流行とその後

ルビー・プリンセス号は、プリンセス・クルーズ社が運航する豪華客船です。2008年、イタリアのフィンカンティエリ社で建造され、同年11月にアメリカ合衆国フロリダ州で命名式が行われました。当初はメキシコ、ハワイ、カリフォルニア沿岸を巡航していましたが、2019年末にはオーストラリアを拠点とするようになりました。

しかし、ルビー・プリンセス号は2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行において、オーストラリアにおける感染拡大の大きな要因の一つとなってしまいました。

感染拡大の経緯

2020年3月、ルビー・プリンセス号はニュージーランドに寄港、その後オーストラリア・シドニーに入港し、約2700人の乗客が下船しました。下船後、乗客の間に新型コロナウイルス感染症の感染が拡大。当初は数人の感染が確認されたものの、急速に感染者数は増加し、オーストラリア全土に感染が拡大しました。

複数の州で感染者が確認され、下船者から多くの二次感染も発生。最終的に、オーストラリア国内で600人を超える感染者と、数十人の死者が出てしまいました。ニュージーランドでも、このクルーズ船を起点とするクラスター感染が発生しました。 感染拡大の状況は、ニューサウスウェールズ州で211人、南オーストラリア州で71人、クイーンズランド州で70人、西オーストラリア州で43人、オーストラリア首都特別地域で22人、ビクトリア州で18人、タスマニア州で3人、ノーザンテリトリーで2人と、多岐に渡りました。

感染拡大を受け、各州政府は下船者への自主隔離を要請。しかし、感染拡大のスピードと規模は、当局の対応を圧倒するものでした。死亡者数は増加の一途を辿り、最終的には19人に上りました。船内では、乗員約1000人のうち200人がインフルエンザ様の症状を訴え、18人の感染が確認されました。

オーストラリア政府と州当局への批判

ルビー・プリンセス号での感染拡大は、オーストラリア政府と州当局への批判を招きました。特に、乗客の下船許可に関する対応が問題視され、感染拡大の防止に失敗したとして非難されました。シドニーへの下船を許可したことにより、ウイルスがオーストラリア全土に広がったとの批判が集中しました。

犯罪捜査の開始

オーストラリアのニューサウスウェールズ州警察は、ルビー・プリンセス号の運営会社であるカーニバル・オーストラリア社に対し、新型コロナウイルスの船内流行を意図的に隠蔽した疑いで犯罪捜査を開始しました。これは、オーストラリアのバイオセキュリティ法違反に該当する可能性がありました。ニュージーランドでも、同様の法的調査が行われました。捜査の一環として、船のブラックボックス（航海記録装置）も押収されました。

その後

ルビー・プリンセス号による感染拡大は、オーストラリアにおける新型コロナウイルス感染症対策の課題を浮き彫りにしました。クルーズ船の運営における感染症対策の重要性、そして政府・自治体による迅速かつ効果的な対応の必要性が改めて認識されることとなりました。事件は、感染症対策における国際的な協力体制の強化の必要性を訴えかけるものでもありました。ルビー・プリンセス号は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行における、一つの象徴的な出来事として記憶されています。

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