ル・トリアノン

ル・トリアノン：パリの歴史を彩る劇場とコンサートホール

ル・トリアノンは、パリ18区のロシュシュアール通り、モンマルトルの丘の麓に位置する劇場兼コンサートホールです。その歴史はカフェ・コンセールとして始まり、劇場、映画館としての時代を経て、再びライブ会場として多くの人々を魅了しています。ここでは、ル・トリアノンの波乱万丈な歴史と、その魅力に迫ります。

カフェ・コンセール「トリアノン＝コンセール」（1894-1900年）

1894年、エリゼ・モンマルトルの庭園に、若手建築家エドゥアール・ニエルマンの設計により「トリアノン＝コンセール」が誕生しました。当時人気を博していたカフェ・コンセールの一つとして、パリの音楽シーンに新たな風を吹き込みました。1895年の開業時には、後のムーラン・ルージュのスター、ミスタンゲットがデビューを飾っています。

1897年には、エリゼ・モンマルトルの所有者によって増築が行われ、コンサートやレビュー、リサイタル用の部屋と、ダンスやスケート用の部屋が新設されました。ニエルマンは、ギュスターヴ・エッフェルがパリ万国博覧会で使用した鋼鉄を増築に使用し、その構造に強靭さをもたらしました。この頃には、ラ・グーリュやValentin le désosséといった著名なアーティストが出演し、アンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレックも常連客として名を連ねていました。

しかし、1900年2月17-18日の夜、悲劇が起こります。火災によりホールとエリゼの建物が焼失し、正面部分のみを残して灰燼に帰しました。早着替えアーティストのレオポルド＝フレゴリは、この火災で装飾品や衣装を全て失ってしまいました。

劇場と音楽ホール「トリアノン＝テアトル」（1902-1939年）

火災後、建築家ジョセフ・カシアン・バーナードによって、1000席と2階分のバルコニー席を備えたイタリア様式の劇場として再建されました。1902年12月18日に「トリアノン＝テアトル」として開業し、その後「テアトル・ヴィクトル＝ユーゴー」、「トリアノン＝コミック」、「トリアノン＝リリーク」と名称を変え、様々な演劇や音楽を提供しました。ピカソが劇場を訪れ、常連客の似顔絵を描いていたというエピソードも残っています。1936年には、イヴェット・ギルベールやマリ・デュバなど、当時の人気アーティストが出演する音楽ホールとして賑わいました。

映画館「シネフォン・ロシュシュアール」（1939-1992年）

1939年、ル・トリアノンは映画館「シネフォン・ロシュシュアール」として新たな道を歩み始めました。1950年代初めには、ジャック・ブレルが頻繁に訪れ、歌詞を書いたとされています。戦後、映画館はドキュメンタリーやニュース映画、ライブ・パフォーマンス、カラー映画、シネマスコープなど、幅広いジャンルの作品を上映し、人々の娯楽の中心地となりました。しかし、1980年代半ばになると、テレビやビデオの普及により人気が低迷し、1992年に閉館となりました。

近年：ライブ会場としての復活

近年、ル・トリアノンは再びライブ公演に主軸を置き、クラシック音楽からポピュラー音楽まで、様々なジャンルのアーティストの公演を上演しています。カーラ・ブルーニ、ベナバール、ジャック・イジュランといった人気歌手や、ミュージカル・コメディーの上演で知られるようになりました。また、オペラ、ショー・ケース、ファッション・ショー、映画の試写会、フェスティバルなど、多様なイベントが開催されています。2003年からは、TV番組『ヌーヴェル・スター』のオーディション会場としても使用されています。

1988年に歴史的建造物として登録されたル・トリアノンは、2009年に修復工事のため一時閉館しましたが、2010年11月20日に再オープンを迎えました。再オープン後には、M.I.A.、ゴールドフラップ、デフトーンズなど、数多くの著名アーティストがコンサートを行っています。2012年には、リアーナがアルバムのプロモーションで登場し、話題を呼びました。

施設概要

ル・トリアノンは、大玄関、舞踏会場、冬園、劇場、レストラン、楽屋、ケータリング、オフィスを備えています。劇場の席数は、一等席647、バルコニー席440です。1階には、劇場の開業当時から営業していた喫茶店「ル・プティ・トリアノン」がありましたが、一度閉店し、2011年4月に20年ぶりに営業を再開しました。最寄り駅は、地下鉄アンヴェール駅です。

ル・トリアノンは、その長い歴史の中で様々な姿に変貌を遂げながら、常にパリの文化シーンを彩ってきました。劇場、映画館、そしてライブ会場として、これからも多くの人々に感動と興奮を与え続けることでしょう。

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