ル・ブルジェ

ル・ブルジェ：航空の歴史と発展を刻むパリ近郊の街

ル・ブルジェは、フランスのパリ北部郊外に位置する、セーヌ＝サン＝ドニ県に属するコミューンです。この街の名前は、ラテン語の「町」を意味する語に由来し、15世紀には現在の表記が定着しました。古くから交通の要衝であったル・ブルジェは、ガロ＝ローマ時代には主要な道路が通っており、人々の定住が始まりました。1134年にはルイ6世がモンマルトル修道院に土地を寄進したという記録が残っており、その後もパリとフランドルを結ぶ道路沿いの小さな村落として発展を遂げました。9世紀にはハンセン病病院、15世紀には郵便局が設立されるなど、歴史の古い集落です。

中世から近世にかけては、ル・ブルジェは周辺領主の支配下にありましたが、1700年代初頭に自主的な行政運営を開始。その後、産業革命の波に乗り、19世紀後半には様々な産業が興隆しました。特に、パリとフランドルを結ぶ道路は、鉄道網の整備にも貢献し、地域の成長を支えました。普仏戦争においては、激戦地ともなり、多くの犠牲者を出しました。

ル・ブルジェの歴史を語る上で、最も重要な出来事は、第一次世界大戦中の1914年、軍用飛行場の設置です。パリを防衛するため、急遽設置された飛行場は、その後フランス陸軍航空隊の拠点として発展し、パリ近郊のルトランシュ飛行場を補完する存在となりました。ドイツ軍による空襲の脅威を受け、飛行場は拡張され、格納庫や兵舎が建設されました。大戦中は、パリを守る重要な役割を担い、多くの航空機や人員を擁する大規模な拠点へと成長しました。

終戦後、ル・ブルジェ飛行場は民間航空へ転換、急速な発展を遂げました。ロンドンやブリュッセルなどヨーロッパ主要都市への路線が開設され、1930年代には年間数十万人の旅客を輸送する一大拠点に成長しました。世界各地への定期便も就航し、ル・ブルジェは国際的なハブ空港としてその名を馳せました。第二次世界大戦中はナチス・ドイツに占領され、戦後はアメリカ軍とイギリス軍によって再建されました。

戦後、航空交通の急増に対応するため、パリ市はオルリー空港を建設。オルリー空港の飽和状態を受けて、ル・ブルジェ空港の利用客は一時的に増加しましたが、その後シャルル・ド・ゴール国際空港が開港すると、ル・ブルジェ空港の役割は次第に縮小していきました。現在では、主にビジネスジェットや一般航空機の発着場として利用され、その歴史的な意義を伝える航空宇宙博物館も存在しています。

交通アクセスは、RER B線ル・ブルジェ駅が利用でき、自動車ではA1、RN2、RN17号線などが通っています。姉妹都市には、アメリカの2都市や、スペイン、ロシア、ルワンダの都市などがあります。

ル・ブルジェは、航空の歴史を肌で感じることができる、魅力的な街です。近代的な都市機能と歴史的建造物、そして航空宇宙博物館が調和した、独特の雰囲気を持つこの街は、歴史と未来が交差する場所と言えるでしょう。著名な実業家ベルナール・タピも、幼少期をル・ブルジェで過ごしました。

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