ルーカス・ディ・グラッシ

ルーカス・ツッチ・ディ・グラッシ：華麗なるモータースポーツキャリア

ルーカス・ツッチ・ディ・グラッシ。ブラジル、サンパウロ出身のこのレーシングドライバーは、1984年8月11日生まれ。179cmの長身と74kgの鍛え抜かれた体躯からは、並々ならぬ闘志が感じられる。彼のキャリアは、若き日のカート時代から始まる。1997年から2001年にかけて、世界各地のカート選手権に参戦し、パンアメリカン、南米、ブラジルと主要3タイトルを制覇する快挙を成し遂げた。

その後、2002年にはブラジルフォーミュラルノーで2位、2003年には南米F3で2位と、着実にステップアップしていく。2004年にはイギリスF3に参戦し、ルノー・ドライバー・ディベロップメント・プログラムに参加。翌2005年にはユーロF3で3位に入り、マカオグランプリで優勝という輝かしい実績を残した。

2006年からGP2に参戦。ARTグランプリ、バルワインターナショナル・カンポスなど複数チームを渡り歩き、上位常連として活躍。2008年にはルノーF1チームのサードドライバーに就任する。F1への期待が高まる中、2009年にはGP2に復帰するも、シーズン中にネルソン・ピケJr.がチームを離脱したことで、再びルノーF1のサードドライバーに昇格。そして、同年12月、ヴァージン・レーシングと契約。念願のF1デビューを果たした。

F1での2010年シーズンは、マシントラブルなどに苦しんだものの、徐々に経験を積み重ね、チームメイトであるティモ・グロックを上回る順位でフィニッシュすることもあった。しかし2011年はスポンサー不足により、シートを失う。その後はピレリのテストドライバーを務めながら、新たな挑戦の機会を模索した。

そして、彼のキャリアに大きな転換期が訪れる。2013年、当時開発段階にあったフォーミュラEの開発ドライバーに就任。翌2014年、フォーミュラE選手権が開幕すると、アウディ・スポーツ・アプト・フォーミュラEチームから参戦を開始する。

フォーミュラEでのディ・グラッシは、まさに輝きを放った。初年度の北京ePでは見事優勝。その後も表彰台に何度も上がり、年間ランキング3位という好成績を収めた。続くシーズンでは優勝こそあったものの、重量規定違反による失格などが響き、惜しくもチャンピオンを逃す。しかし、諦めないディ・グラッシは3年目の2016-17シーズン、最終戦で逆転優勝を果たし、悲願のチャンピオンに輝く。さらに、全てのレースでファンブーストを獲得するという偉業も達成した。

2021-22シーズンはアウディの撤退に伴い、ロキット・ヴェンチュリー・レーシングに移籍。チームメイトのエドアルド・モルタラと共に活躍し、総合ランキング5位でシーズンを終えた。

ディ・グラッシは、レース界での成功だけでなく、人間性も魅力的だ。同じブラジル出身のブルーノ・セナとは親友であり、共にトライアスロンにも挑戦。そのチーム名は、二人のニックネームを組み合わせた「Ribs Fat」。セナがカート事故で肋骨を骨折したエピソードと、イタリア語で「脂肪」を意味する「グラッシ」という名字を掛け合わせた、ユーモラスなネーミングセンスが光る。

2018年には「過去10年間で最も成功したブラジル人ドライバー」と称されるなど、その功績は広く認められている。ルーカス・ツッチ・ディ・グラッシのモータースポーツキャリアは、これからも多くのファンを魅了し続けるだろう。

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