ルーカン

ルーカン卿（Sir Lucan）について

ルーカン卿は、アーサー王物語の中でも特異な役割を担う人物であり、彼の存在は物語の進行に重要な影響を与えています。彼はアーサー王に仕える執事として知られていますが、実際には「献酌侍臣」としての役割も担っています。この役割は単なる執事を超えたもので、特にワインの管理を任されている点が特徴です。

彼の初出は『ペルスヴァル』の『第一続篇』で、約1200年頃に描かれています。この作品では、アーサー王軍が「傲れる城」（仮訳・Castel Orguellous）を攻める際に、ルーカンが最初に出場するジョスト（槍試合）で名を馳せます。後に流布本系の作品やマロリーの作品では、彼の立場や血縁がより詳細に描かれています。

例えば、流布本系の『アルテュス王の死』（1230年頃）においては、ルーカンはベディヴィア卿の兄弟としての立場で紹介され、コルネウス公の子とされています。物語のクライマックスでは、モードレッド卿に引き起こされた謀反の最終決戦であるソールズベリー（またはカムランの戦い）を生き延び、アーサー王を「黒き寺院」（Noire chapel）まで運ぶ役割を果たします。しかし、悲劇的な運命を迎え、アーサー王のあまりの悲しみにより、その強い抱擁によって命を落とすことになります。この作品では、王剣エクスカリバーを湖に捨てる役目を担うのは従兄弟のジルフレです。

マロリーの『アーサーの死』（1470年）では、ルーカン卿は再び物語の重要なキャラクターとして登場します。ここでも彼はベディヴィア卿の兄として設定されており、アーサーを運ぶ役割が変化し、ルーカンとベディヴィア卿の二人が王を寺院から移動させようとした際に、ルーカンはさらなる傷を負って命を落とします。このように、彼の運命は物語の中心であるアーサー王の悲劇的な運命と密接に結びついています。

ルーカンのキャラクターは、原作の中では一貫した勇敢さや忠誠心が描かれており、一方で騎士としての活躍は初期に限定され、後には主にその名が槍試合に登場する程度に留まります。彼の悲劇的な死は、アーサー王物語全体の中で重要なテーマである忠誠や犠牲の象徴とも考えられます。

このように、ルーカン卿はアーサー王物語の文脈の中で複雑な役割を果たすキャラクターであり、彼の存在は物語の核心に迫る重要なファクターとなっています。

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