レイ・イームズ

レイ・バーニス・アレクサンドラ・カイザー・イームズ（旧姓カイザー）は、1912年12月15日にカリフォルニア州サクラメントで生まれ、1988年8月21日に亡くなったアメリカのアーティスト、デザイナー、そして映画監督です。彼女は、夫であるチャールズ・イームズとの創造的なパートナーシップを通じて、20世紀のデザイン界に大きな足跡を残しました。

生涯

レイは、サクラメントでアレクサンダーとエドナ・バー・カイザーの娘として誕生しました。兄のモーリスがいました。彼女は家族から「レイレイ」という愛称で親しまれていました。父親は当初、劇場を経営していましたが、後に保険のセールスマンに転身し、一家を支えました。幼少期の大半をアパートで過ごしたレイの家族は、後に郊外のバンガローに引っ越しました。

両親は、レイに楽しみの本質を教え、それが後の家具デザインやおもちゃの発明に繋がったとされ、また、自然を楽しむことの大切さを教えました。

教育

レイは、若い頃に父親を亡くし、その後いくつかの都市に住んだ後、1933年にベネット女子大学を卒業しました。その後、美術をル・デュブレに師事し、ニューヨークに移り住みます。ニューヨークでは、デュブレの師であるハンス・ホフマンの下で抽象表現主義絵画を学びました。

1936年には、アメリカ抽象画家グループの創立メンバーとなり、1937年にリバーサイド博物館で最初の展覧会を開催しました。このグループは、当時の主要なギャラリーから展示を拒否されていた抽象芸術を積極的に宣伝しました。レイは、当時のニューヨークのアートシーンで重要な人物となり、リー・クラズナーやメルセデス・マターといった抽象表現主義の重要人物と親交を深めました。彼女の作品はホイットニー・アメリカン・ミュージアムの常設コレクションにも収蔵されていますが、この時代の作品の多くは失われています。

母親の看病のために、レイはニューヨークを離れて実家に戻り、ホフマンのスタジオを離れます。1940年に母親が亡くなった後、レイはカリフォルニアに戻ることを決意し、家を設計し建設するために移住しました。しかし、建築家の友人であるベン・ボールドウィンの勧めにより、ミシガン州にあるクランブルック・アカデミー・オブ・アートで学ぶことになります。この学校で、レイは抽象絵画だけでなく、さまざまな芸術を学びました。彼女はそこでハリー・ベルトイア、エーロ・サーリネン、そして後の夫となるチャールズ・イームズらと出会い、現代美術館の展覧会「オーガニック・デザイン・イン・ホーム・ファニッシング」の準備に携わりました。

チャールズ・イームズとの結婚

1941年、レイはチャールズ・イームズと結婚し、カリフォルニア州ロサンゼルスに移り住みます。二人は、デザインと建築の分野で傑出したキャリアをスタートさせます。

イームズオフィス

レイとチャールズのデザインプロセスは、強力な共同作業でした。この記事では、レイが特に貢献した分野に焦点を当てて紹介します。

グラフィックデザイン

グラフィックと商業アートの分野では、レイの才能が際立っていました。1942年から1948年にかけて、雑誌「Arts & Architecture」の26のカバーデザインを手掛け、ハーマンミラーのイームズ家具の広告の多くをデザインしました。

テキスタイルデザイン

1940年代後半には、いくつかのテキスタイルデザインを制作しました。そのうち「クロスパッチ」と「シーシングス」は、サルバドール・ダリやフランク・ロイド・ライトもテキスタイルを手掛けたシファープリント社によって製造されました。レイのデザインしたテキスタイルパターンは、MoMAが主催するテキスタイルコンペティションで賞を受賞しています。彼女はまた、広告、雑誌の表紙、ポスター、タイムライン、ゲームボード、招待状、名刺などのグラフィックデザインも担当しました。彼女のテキスタイルのオリジナル作品は、多くの美術館に収蔵されています。また、「Ray Eamesテキスタイル」は、マハラム社によって「20世紀のテキスタイル」コレクションの一部として復刻されています。

合板のデザイン

1945年から1978年にかけて、イームズオフィスは数多くの家具デザインを世に送り出しました。その多くは、合板を利用したもので、商業生産されました。イームズの最初の合板製品は、アメリカ海軍向けに作られた副木でした。このアイデアは、イームズの医学の友人が、衛生面で問題のある金属製の副木について語ったことがきっかけでした。金属製の副木は大量生産されていたため、人体に適合する人間工学に基づいた複合湾曲デザインではなく、平面的なデザインでした。海軍はイームズに大量生産を依頼し、彼らの会社は成形合板製品部門を設立しました。

後年

1978年にチャールズが亡くなった後、イームズオフィスは倒産しました。レイは、ドイツ語版の「Mathematica」展覧会など、いくつかの未完のプロジェクトに取り組みました。また、IBMのコンサルタントを務めたり、書籍を出版したり、イームズのアーカイブと土地資産を管理したりしました。亡くなる数年前には、50から60の地域の学生グループを訪問しました。また、亡くなる直前には、アメリカ建築家協会のメンバーを招いて牧草地の家とピクニックを開催する予定でした。

レイ・イームズは、チャールズの死から10年後の1988年に、ロサンゼルスのシダーズシナイ病院で亡くなりました。彼女はセントルイスのカルバリー墓地に埋葬されました。レイの死後、イームズオフィスは完全に閉鎖されました。

死後

レイの生誕100周年となる2012年12月15日、ヴィトラ社はバーゼルキャンパスの通りを「レイイームズ通り1」と改名しました。2013年2月23日には、カリフォルニア州サクラメント博物館で「レイ・イームズ：モダンデザインの世紀」と題する展覧会が開催されました。この展覧会では、チャールズと出会う前のレイの作品や、イームズオフィスの仕事に加えて、レイが個人的に制作した作品が展示されました。

哲学

レイ・イームズは、「イームズオフィス」を「ショップ」と呼び、楽しみながらも厳格な仕事倫理を持っていました。この「ショップ」という言葉は、彼らが初期の制作作業を行った場所の意味合いも含まれています。

レイ・イームズは、デザインを通じて人々に喜びと快適さをもたらすことを追求し、その創造的な精神は今もなお、世界中のデザイナーやアーティストに影響を与え続けています。

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