エーロ・サーリネン

エーロ・サーリネン：20世紀を代表する建築家

エーロ・サーリネン（Eero Saarinen、1910年8月20日 - 1961年9月1日）は、フィンランド生まれのアメリカ人建築家、プロダクトデザイナーです。彼は、その革新的なデザインと、シンプルで力強いアーチ状の構造を多用した作品で、20世紀の建築界に大きな影響を与えました。

生涯

エーロ・サーリネンは、フィンランドの著名な建築家エリエル・サーリネンの息子としてヘルシンキで生まれました。13歳の時、家族と共にアメリカ合衆国へ移住し、ミシガン州のクランブルック美術大学で父の指導を受けました。この大学在学中に、チャールズ・イームズとレイ・イームズと出会い、深い親交を結びました。その後、パリで彫刻を学んだ後、イェール大学建築学科に進学し、1934年に建築学の学位を取得しました。

卒業後、奨学金を得て2年間のヨーロッパ旅行に出かけ、建築に対する視野を広げました。1937年には、父エリエルと共に建築設計事務所を設立し、数々のプロジェクトに携わりました。1940年には、チャールズ・イームズと共にニューヨーク近代美術館の「オーガニック家具デザイン」コンペに応募し、成型合板を使用した椅子や机が2部門で優勝しました。第二次世界大戦中には、アメリカ戦略局の建築技術者として兵役に従事しました。

1948年、エーロ・サーリネンはミズーリ州セントルイスのジェファーソン・ナショナル・エクスパンション・メモリアルの主要な記念碑である「ゲートウェイ・アーチ」のデザインコンペで優勝し、一躍注目を浴びました。当初、この賞は誤って父エリエルに贈られましたが、後にエーロの作品であると訂正されました。高さ192m、幅192mにも及ぶこの巨大なアーチは、1963年に着工し、1965年に完成しました。このモニュメントは、セントルイスと西部開拓の象徴として、今もなお多くの人々に親しまれています。

1950年に父が亡くなった後、事務所名を改称しました。その後、ゼネラルモーターズ技術センター、MITクレスゲ・オーディトリアム、そして特に有名なジョン・F・ケネディ国際空港のTWAターミナルビルなど、コンクリートシェル構造を用いた流れるような曲線が特徴的な建築物を数多く手掛け、表現主義的なスタイルで一世を風靡しました。

エーロ・サーリネンは、建築物の内装や家具デザインも手掛け、チューリップチェアに代表される曲線を用いた未来的なデザインは、20世紀中期のデザインを象徴するものとして知られています。また、彼はシドニー・オペラハウスの建築設計競技において審査委員を務めた際、落選案の中からヨーン・ウツソンの案を強く推し、最終的に優勝させたことでも知られています。

1961年、エーロ・サーリネンは脳腫瘍のため51歳で亡くなりました。彼の死後、ゲートウェイ・アーチをはじめとする多くの未完成プロジェクトは、彼の事務所で働いていた建築家ケヴィン・ローチらによって完成されました。生前は、作品ごとに作風を変えることから建築界の権威から嘲笑されることもありましたが、今日では20世紀アメリカを代表する巨匠の一人として高く評価されています。

主な建築作品

ゲートウェイ・アーチ（セントルイス）
ゼネラルモーターズ技術センター
MITクレスゲ・オーディトリアム
TWAターミナルビル（ジョン・F・ケネディ国際空港）

主な家具作品

ウームチェア（Womb Chair、1945）
グラスホッパーチェア（Grasshopper Chair、1946）
チューリップチェア（Tulip Chair、1956）

関連書籍

『SD選書227　エーロ・サーリネン』（穂積信夫著、鹿島出版会、1996）

エーロ・サーリネンに関わりのあった人物

ケヴィン・ローチ - 事務所に在籍。
ロバート・ヴェンチューリ - 事務所に在籍。
グンナー・パーカーツ - 事務所に在籍。
シーザー・ペリ - 事務所に在籍。
* ルイス・I・カーン - エーロと親交があった。

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