チャールズ・イームズ

チャールズ・オーモンド・イームズ・ジュニア（Charles Ormond Eames Jr.、1907年6月17日 - 1978年8月21日）は、アメリカを代表するデザイナー、建築家、そして映像作家です。妻であるレイ・イームズと共に、20世紀の工業デザインに大きな足跡を残しました。彼らの作品は、素材の可能性を追求し、機能美と革新性を兼ね備えています。

生い立ちと初期のキャリア

1907年、ミズーリ州セントルイスで生まれたチャールズは、幼少期からものづくりに興味を持っていました。父親の遺した写真機材で撮影を始め、14歳で製図工見習いとして働きながら設計や製図の技術を習得しました。1925年からセントルイス・ワシントン大学建築学科で学びますが、フランク・ロイド・ライトに傾倒するあまり、「モダンすぎる」と評され退学を余儀なくされます。大学時代に最初の妻キャサリンと結婚し、ヨーロッパ旅行でモダニズム建築に触れたことが、後の活動に大きな影響を与えました。

世界恐慌の影響で仕事に苦労する中、建築設計事務所を開設。その後、フィンランド人建築家エリエル・サーリネンとの出会いが転機となります。サーリネンの招待でミシガン州のクランブルック美術学院へ入学し、後には同校のインダストリアルデザイン学科長を務めました。

レイ・イームズとの出会いと革新的なデザイン

1940年、イームズはエーロ・サーリネンと共に、ニューヨーク近代美術館のコンペで成型合板を用いた椅子を発表し、注目を集めます。翌年、最初の妻と離婚し、クランブルック美術学院で同僚だったレイ・カイザーと再婚。ロサンゼルスへ移り、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーで働きながら、成型合板家具の大量生産に取り組みました。彼らは成型合板の技術を飛躍的に発展させ、椅子だけでなく、彫刻作品、医療用具、航空機部品など幅広い製品を開発しました。

1942年からは、芸術雑誌「アーツ＆アーキテクチャー」の編集にも携わり、1949年にはケース・スタディ・ハウスに参加し、自邸を建設しました。このイームズ邸は、既存の工業製品を組み合わせることで建築費を抑え、新たな建築の可能性を示唆する画期的なものでした。

多岐にわたるデザイン活動

1950年代以降、イームズ夫妻は家具デザインに加え、ショートフィルム製作にも注力しました。彼らの映像作品は、実験的かつ教育的であり、特に「パワーズ・オブ・テン」は数量の比較を視覚的に表現した名作として知られています。また、おもちゃや収集品、日常の風景などを捉えた映像作品も多く、その創造性は多岐にわたりました。彼らは展示プロデュースも手掛け、IBMの依頼で制作した「マスマティカ展」は、科学を一般に広めるための展示のモデルとして高く評価されています。その他にも、「コンピューターの展望」や「フランクリンとジェファーソンの世界」といった展示を手掛け、教育と文化の発展に貢献しました。

1943年から1988年まで、イームズ事務所はロサンゼルスで活動し、多くのデザイナーを輩出しました。合板成形によるDCWやDCM、ラウンジチェア、アルミニウムグループの家具、映画監督ビリー・ワイルダーのためにデザインしたラ・シェーズなど、数々の名作を生み出しました。また、ソーラーエネルギーの実験やおもちゃの開発など、多岐にわたる活動を展開しました。

晩年と遺産

チャールズ・イームズは1978年、故郷セントルイスで心臓発作により死去しました。妻のレイ・イームズは、10年後の同じ日に亡くなっています。彼らのデザインは、現在も世界中で愛され、その革新的な精神は多くのデザイナーに影響を与え続けています。

主な作品

建築:
ディンスモア・ハウス (1936年)
マイヤー邸 (1938年)
イームズ邸 (1949年)
エンテンザ邸 (1949年)
家具:
プライウッド・チェア (1945年)
ラ・シェーズ (1948年)
プラスティック・チェア (1950年)
ワイヤーメッシュ・チェア (1951年)
ラウンジチェア＆オットマン (1956年)
アルミニウムグループ (1958年)
映像:
コミュニケーション入門 (1953年)
おもちゃの汽車のトッカータ (1957年)
SX-70 (1972年)
* パワーズ・オブ・テン (1977年)

イームズ夫妻の作品は、デザインの歴史において重要な位置を占めており、その独創的な発想と技術は、今なお多くの人々に刺激を与え続けています。

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