レオ12世 (ローマ教皇)

レオ12世

レオ12世（Leo XII, 1760年8月22日 - 1829年2月10日）は、第252代ローマ教皇であり、カトリック教会の司祭です。教皇としての在位期間は1823年9月28日から1829年2月10日まででした。本名はアンニーバレ・セルマッテイ・デッラ・ジェンガ（Annibale Sermattei della Genga）といい、外交官としては卓越した能力を発揮しましたが、教皇領内では専制的な統治を行い、結果として住民からの支持を大きく失いました。

生涯

アンニーバレ・セルマッテイ・デッラ・ジェンガは、1760年にイタリアの貴族であるジェンガ家の一員として誕生しました。ジェンガ家は、現在のアンコーナ県にあるジェンガを本拠地とする由緒ある一族です。彼の出生地は明確には特定されていませんが、一般的にはジェンガまたはスポレートのいずれかであると考えられています。

1783年、彼は司祭に叙階され、聖職者としての道を歩み始めます。教皇ピウス6世の治世下で教皇庁でのキャリアをスタートさせた後、彼はすぐにその外交手腕を認められることになります。ティルス名義司教に任じられたのを皮切りに、ヨーロッパ各地、特にケルンやパリといった重要な都市へ教皇使節として派遣されました。これらの任地において、彼はナポレオンや各国の宮廷との複雑な交渉に携わり、その外交官としての手腕は高く評価されました。

1820年、彼は当時の教皇ピウス7世によって枢機卿に昇進しました。そして、1823年に行われたコンクラーヴェにおいて、63歳でローマ教皇に選出されることになります。この教皇選出の際には、当時のフランスの強い影響下にあった枢機卿団から激しい反対があったと伝えられています。

教皇としての治世

教皇に即位したレオ12世は、その外交経験を生かし、活発な外交政策を展開しました。特に、後に枢機卿となるエルコール・コンサルヴィを右腕として重用し、非カトリック諸国との間にも友好的な関係を築くことに成功しました。この点は、彼の治世における重要な成果の一つとされています。

しかし、教皇領における内政面では、その方針は大きく異なりました。彼は非常に厳格で保守的な政策を推進し、住民に対する徹底的な監視システムを構築しました。また、ユダヤ人に対しては、強制的に特定区域（ゲットー）へ居住させるなどの隔離政策を強行しました。さらに、カルボナリやフリーメイソンといった秘密結社に対しては、断固たる姿勢で非難し、弾圧を行いました。これらの専制的な統治は、教皇領内の経済を停滞させ、住民からの強い反発を招きました。多くの人々は、彼の厳しすぎる支配に苦しめられたのです。

外交官としては評価されつつも、内政における強権的な手法は、教皇領の民心を急速に失わせる結果となりました。彼の治世の終わり頃には、住民の間には不満が蓄積されていたとされています。

1829年2月10日、レオ12世はこの世を去りました。彼の死後、長年の専制的な統治から解放された教皇領の住民たちは、その死を露骨に喜んだと記録されています。これは、彼の内政政策が住民からいかに受け入れられていなかったかを示す象徴的なエピソードと言えるでしょう。彼の治世は、優れた外交手腕と対照的な、国内での統治の失敗という二面性によって記憶されています。

彼の治世は、その外交官としての卓越した才能と、国内統治者としての厳格さゆえに招いた住民の反発という、対照的な側面によって特徴づけられています。外交においては成功を収めたものの、教皇領内の統治においては多くの課題を残しました。

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